【スポニチスカウト部(29)】日体大・矢沢宏太 野球を楽しむ原点は「二刀流」

[ 2022年9月6日 06:00 ]

今季リーグ最多の44回1/3を投げ、最速152キロの直球と切れ味鋭いスライダーが武器の日体大・矢沢

 今秋のドラフト候補となる選手にスポットを当てる「スポニチスカウト部」。アマチュア担当記者の独自目線による能力分析とともに、選手たちの素顔を紹介する。第29回は日体大の二刀流左腕・矢沢宏太投手(22)。投手としても外野手としてもトップクラスの実力を備える。10月20日に開催されるドラフト会議で最大の注目を集める男の可能性は、どこまでも広がっている。

 強豪の日体大で打線の主軸兼エースとして活躍する矢沢は「二刀流は小さいころからやってきた野球。三振を奪うことにこだわっているし、ホームランもいい」と野球を楽しむ原点を忘れない。エンゼルス・大谷のようにプロでも二刀流を継続するのか、プロ球団の判断に注目が集まる。

 投手・矢沢は最速152キロの直球と切れ味鋭いスライダーが武器の左腕。今春はリーグ最多の44回1/3を投げるなどスタミナは無尽蔵だ。また、今年のドラフト戦線は有力左腕が少なく、矢沢の他に1位候補と目されるのは白鴎大・曽谷のみで希少価値も高い。投手評価だけでも矢沢の1位指名は揺るがない。

 投手としてのプロ入り後はどうか。日体大では先発起用されているが、球種が多彩ではないため「1イニングに全力を出す救援投手に適性がある」と評価するスカウトの声もあり、ソフトバンク・モイネロのような活躍もイメージできる。

 打者としてもアマ球界トップクラスだ。昨年までは右翼へ引っ張る長打が目立ったが、6月に神奈川県平塚市で行われた侍ジャパン大学代表選手選考合宿の打撃練習では左方向へ柵越えを連発。「逆方向の打球を一つのテーマにしてアピールしたいと思っていた。いいアピールができたと思います」と話した。

 同合宿で機械測定された50メートル走では5秒98を記録して参加選手トップに輝いた走力も魅力。選考合宿を視察したオリックス・牧田勝吾編成部副部長は「やっぱり能力が高く飛距離も凄い。今年の目玉になる」と評価した。

 8月1日に行われたU23NPB選抜とのプロアマ記念試合でも投打で躍動した矢沢。視察した中日・米村明アマスカウト・シニアディレクターは「投手・矢沢なのか、外野手・矢沢なのか悩みますね…どちらもトップクラスのセンスを備えている。需要と供給の問題で、獲得するポジションは球団次第でしょうね」と言った。投手か外野手か、はたまた二刀流か…。選択肢が多い分だけ、各球団は熟考を重ねることになりそうだ。(柳内 遼平)

 《元中日・辻コーチらからプロのノウハウ吸収》藤嶺藤沢(神奈川)時代に指名漏れを経験。制球難が原因だったが「ドラフト1位でプロ入りします!」と入部時に言い切った日体大で、貴重な出会いがあった。古城隆利監督の「可能性を一つに絞るのは良くない」との考えもあり二刀流挑戦が決定。投手として中日でプレーした辻孟彦コーチの指導を受け、昨年4月には日本ハムなどで内野手として活躍した大引啓次氏が臨時コーチに就任した。投打で元プロのノウハウを吸収しており「恵まれた環境」と感謝している。

 ☆球歴 6歳から町田リトルで野球を始め、忠生中では町田シニアでプレー。藤嶺藤沢では1年夏からベンチ入りし同秋からエースも甲子園出場なし。高校通算32本塁打。日体大では1年春から野手でリーグ戦に出場し同秋からリーグ戦に登板。2年秋に外野手、3年秋に投手、4年春に指名打者でベストナイン。

 ☆近年の日体大のプロ入り選手 18年に西武1位指名の松本航、ロッテ2位の東妻勇輔、19年にヤクルト2位の吉田大喜、20年は中日2位の森博人と3年連続で投手がドラフト上位指名を勝ち取った。

続きを表示

この記事のフォト

2022年9月6日のニュース