双大竜 前へ、前へ!福島市出身の新入幕が復興の光に

[ 2013年3月11日 06:00 ]

大道を攻め立てる双大竜

大相撲春場所初日

(3月10日 ボディメーカーコロシアム)
 福島市出身の新入幕・双大竜(そうたいりゅう、30=時津風部屋)が復興の光となる。幕内・大道(30=阿武松部屋)に突き落とされて黒星発進となったが、幕内最軽量の122キロから繰り出す積極果敢な突き押し相撲を披露。東日本大震災から2年。岩手、宮城、福島の3県出身力士で震災後に初めて幕内の土俵に上がった男は、“真っ向勝負”を貫き、被災者に希望を与えることを約束した。日馬富士(28=伊勢ケ浜部屋)、白鵬(28=宮城野部屋)の2横綱と、4大関は安泰だった。

 ただひたすら、前へ、前へ――。122キロという小さな体ながら“突き押し相撲”が身上の双大竜は45キロも重い大道を突っ張り続けた。さすがに新入幕初日の土俵だけに「硬さがあった」と、前に出たところを突き落とされて両手を土俵にばったり。黒星発進となってしまったものの、気持ちを切り替えた支度部屋では揺るぎない決意をのぞかせた。

 「勝ちたい気持ちは強いです。精いっぱい相撲を取り続けていきたい」

 2年前の東日本大震災。故郷の福島市田沢地区は内陸地だったが、原発事故の影響で「汚染状況重点調査地域」に指定され、今年1月には実家の屋根や壁の除染作業が行われた。痛感したのは、放射能による風評被害。震災前に母・成子(しげこ)さん(65)ら家族は自らの畑で育てたトマト、なす、ネギなどを各地に配っていたが、震災後は野菜を受け取ってくれる人が極端に減少。他人の手に渡ることはほとんどなくなったという。

 相撲に集中することが現地を勇気づける最良の方法だと考えていた双大竜だが、そんな状況を知って黙ってはいられなかった。2月20日に都内で行われたJA全農福島主催の「ふくしま米元気プロジェクトイベント」に参加。「福島産というだけで売れないと聞いている。基準値以下ということを理解していただきたい」と安全性を訴え、被害防止に一役買った。

 自らの相撲人生にとっても「2年前の震災が大きい」と言う。所要46場所での新入幕は学生出身として史上4位のスロー記録。「負けても“惜しかった”と言われたい。とにかく元気の出る相撲を取りたい」。出世のスピードなど関係ない。地道に真っすぐ前を向いて努力してきた双大竜だからこそ、与えられる光がある。

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