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金子達仁氏 名声得た森保監督続投を支持しない理由

[ 2022年12月6日 05:10 ]

サッカー日本代表・森保監督
Photo By スポニチ

 【金子達仁 W杯戦記】レーウか、ビエルサか、それともマルティネスか。それが、先週金曜日のスポニチ1面だった。

 見出しを目にする読者は、すでに日本対スペイン戦の結果を知っている。その結果が新聞には掲載されていないことも知っている。そんな読者に、いかにしてスポニチを手にとってもらうか。考えた末の結論が、次期日本代表監督候補を並べる、ということだったのだろう。

 ちなみに、1面の左端には、かなり控えめに『協会内「森保監督続投」推す声も』との見出しも打たれていた。文字の大きさは「レ」や「ビ」の12分の1ほど。それが、スペイン戦を前にした森保監督に対するスポニチの評価であり、おそらくは世間一般の評価だった。

 だが、スペイン戦が終わると状況は一変した。外国人が基本路線だったはずの次期監督選びに、続投という選択肢が並び立つ形になったことをいくつかのメディアが伝えている。

 選手交代で状況を激変させる今大会における森保監督の采配は、もはや「ハーフタイムの魔術師」とでも言っていい次元にある。もし協会が続投のオファーを出さなかったとしたら、日本国内より、海外から驚きの声が上がることだろう。

 ただ、個人的には、次期監督は森保監督以外がいいな、と思っている。

 理由はざっくりいって2つある。

 メノッティしかり、ビラルドしかり、そして次期監督候補として挙がっているマルティネスまたしかり。W杯で結果を残し、継続と上積みを期待されて続投しながら、むしろ結果を落としてしまった例が気になるから、というのがまず一つ。

 どんな名将であっても、長くやっていれば選手の側に飽きが来る。あのクライフですら、最後はカンプノウを包む「出て行け」の大合唱でバルサを追われた。広島時代の森保監督も、年間予算では2桁順位のチームを3度優勝に導いた後、最後は17位で任を解かれた。同じことが日本代表で起こらないとは言い切れない。

 だが、泥に塗(まみ)れさせてしまうにはあまりにも惜しい世界的な名声を、今大会の森保監督は獲得した。「ここまでのところ、大会の最優秀監督だ」とまで絶賛したのは、米メディア「ジ・アスレティック」だった。英BBCに言わせれば「逆転の王様」。92年に及ぶW杯の歴史において、過去ブラジルと西ドイツしかやったことがなかった、「1大会で0―1からの後半逆転を2度」を、実力で相手を圧倒していたわけではない日本がやってのけたのだから、当然と言えば当然である。

 これほどの名声というのは滅多なことで手に入れられるものではない。クロアチア戦がどんな結果に終わっていようとも、それで手のひらを返す海外のメディアや識者は皆無だろう。わたしだったら、森保監督にはここで一度代表から離れてもらい、日本サッカーのジョーカーとして温存しておきたい……というのが2つ目の理由。

 とはいえ、本人がそんなものに頓着しないというのであれば話は別。賛成はしないが反対もしない。監督とは基本、経験を積むことによって成長していく職業である。より経験を積みたいという気持ちも理解できるからだ。

 わたしが賛成できないのは、「勝ったから祝日に」という声。いや、サウジみたいに、という気持ちはわかるんですが、強敵に勝ったら即祝日というのは、ちょっと志が低すぎる気がして。

 やっぱり、祝日の新設は日本が世界一になった時のためにとっておかないと。(スポーツライター)

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2022年12月6日のニュース