「ムツゴロウ」畑正憲さん 天国の王国へ 「よーしよし」猛獣と魂のスキンシップで人気に 最後は猫1匹

[ 2023年4月7日 04:50 ]

04年、笑顔で動物たちと戯れる畑正憲さん
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 動物との交流を描いたフジテレビ「ムツゴロウとゆかいな仲間たち」シリーズで人気者になった「ムツゴロウ」こと作家の畑正憲(はた・まさのり)さんが5日午後5時53分、心筋梗塞のため北海道中標津町の病院で死去した。87歳。福岡市生まれ。葬儀は親族で行う。喪主は妻純子(じゅんこ)さん。「よーし、よし」と動物の体を撫でて触れあい、動物と人が親密になれることを教えてくれた。動物に度々襲われる“武勇伝”も残した。

 関係者によると、畑さんは6年前に心筋梗塞で緊急入院した。その後、入退院を繰り返しながら、北海道中標津町の自宅で療養を続けていた。最近の楽しみはテレビでスポーツ観戦。列島を沸かせた野球のWBCでも「大谷選手は凄いね」などと侍ジャパンの応援に熱が入っていた。

 今月初め、雑誌のコラム執筆について秘書から連絡を受けた際は「やるよ!」と元気に返答。仕事への意欲を燃やしていた中、5日午後5時ごろ、自宅で「胸が痛い」と言って倒れ病院に救急搬送された。畑さんの長女と結婚した津山剛さん(61)は「最期は苦しまず家族でみとりました。一緒に過ごせて幸せでした」と語った。

 畑さんは東大で動物学を学び、卒業後は学習研究社(現学研ホールディングス)に入社して動物記録映画を製作。1968年に退社して著作活動に入り、同年「われら動物みな兄弟」で日本エッセイスト・クラブ賞を受賞した。71年に北海道浜中町の無人島に熊や馬を連れて移住。翌年、無人島を出て同町内に「動物王国」をつくり、さまざまな動物と共に暮らした。

 動物王国での日々を生かした動物番組の制作を、面識のあったフジテレビの日枝久氏(現フジサンケイグループ代表)に提案。80年に人気番組「ムツゴロウとゆかいな仲間たち」が始まった。世界中を旅しながら動物たちと触れ合い、ライオンなど猛獣にも「よーし、よし」と言いながら近づき大胆にスキンシップ。その生態を体を張って伝えた。00年5月にはブラジルのサンパウロ郊外で収録中、金網に指をかけていたところ、中のライオンに右手中指をかまれ約1センチひきちぎられたが、この場面も放送された。

 番組は01年まで約20年続く人気シリーズとなり、一時は30%超えの高視聴率をマーク。今も続く動物バラエティーの草分けとなった。

 動物王国は04年に東京都あきる野市へ移転したものの、集客が振るわず07年に撤退。一時は、3億円とも言われる借金を背負った。

 30代の頃には500匹以上の動物と共同生活した時期もあった。ただ関係者によると、同い年の妻と余生を過ごした中標津町のログハウスで最後に飼っていたのは「猫1匹だけだった」という。畑さんは「動物より先に自分たちの寿命が来るかもしれないから」と、2年ほど前から“終活”を進めていたという。動物への愛を貫いて、生涯を全うした。

≪東大出身、売れっ子作家、映画監督、麻雀好きの一面も≫

 畑 正憲(はた・まさのり)1935年(昭10)4月17日生まれ、福岡市出身。54年に東京大学入学。60年に学習研究社(現学研ホールディングス)に入社し動物記録映画を製作。68年に退社し著作活動に入り、同年「われら動物みな兄弟」で日本エッセイスト・クラブ賞を受賞。71年、北海道の無人島に移住し、翌年に浜中町に移り「動物王国」を建国。77年に動物文学の発展などの功績で第25回菊池寛賞を受賞。86年には大ヒットした映画「子猫物語」の監督を務めた。日本プロ麻雀連盟最高顧問を務め段位は九段。

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