藤井王将「見習う」侍・大谷流 重圧かかる中での活躍「刺激に」 羽生九段からは「深さ」学んだ 

[ 2023年3月14日 05:00 ]

ウナギのつかみ取りに挑戦する藤井王将(撮影・西尾 大助)
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 藤井聡太王将(20)=竜王、王位、叡王、棋聖含む5冠=が羽生善治九段(52)の挑戦を4勝2敗で退けた将棋の第72期ALSOK杯王将戦(スポーツニッポン新聞社、毎日新聞社主催)7番勝負第6局から一夜明けた13日、藤井は対局地の佐賀県上峰町で本紙恒例の勝者の記念撮影に臨んだ。今期最後の一枚は、王将位ならぬ同町名産の養殖ウナギつかみ。会見ではWBCの侍ジャパンの活躍に刺激を受けていると明かし、自身は重圧への対処法を「アベレージを上げること」と語った。

 最低気温4度の上峰町に、藤井の嘆きが漏れた。「つかむのかあ~」。第1日の11日は対局室の室温27度。クーラーまで稼働した第6局翌日、栄光に包まれたはずの王将は、寒空の下で困惑しきっていた。

 漆黒のウナギが波打つおけをのぞき込み、身動きしない。そして自らを鼓舞して手を出す。逃す。手を出す。逃す。

 「頭から抜けるので難しかった。何とかつかめて良かった。今までで一番苦戦しました」

 勝者の記念撮影は文字通り、王将戦7番勝負の勝者が対局翌日、地元関係者へのお礼を込めて名産などとフレームに納まる。前日、従来の記録を3年以上更新する20歳7カ月での最年少王将防衛を達成し、タイトル獲得を歴代8位タイの12期へ乗せた。一般に扱いづらいとされる角桂の見事なさばきに秀でた藤井将棋だった。

 ところがウナギは駒のようにはいかず、前期から8度目の撮影で最大の苦戦と自ら認めた。将棋にとどまらず予習復習にたけた藤井だが、羽生や連盟会長の佐藤康光九段(53)、久保利明九段(47)らも経験した定番メニューまでは想定してなかった。

 一夜明けの会見では「羽生九段の読みの深さ、柔軟な判断の感覚。長い持ち時間だからこそより感じることができた」と振り返った。WBCにも言及。大会への関心は「体育でソフトボールをしても打てたためしがない。野球は詳しくないです」としたが、前夜12日のオーストラリア戦で大会1号を放った大谷翔平投手(28)らの活躍には興味津々。「注目される試合でパフォーマンスを出せるのは素晴らしい。刺激になるし見習っていきたい」。棋王戦とのダブルタイトル戦のさなかで、重圧への対処法には同じプロ競技者として関心があるようだった。

 自身も重圧に対処してきたからこその史上最年少5冠であり敗退なしの12期。「将棋は気合を入れたから勝てるわけじゃない。アベレージを上げることかなと思います」

 突き詰めれば、指し手の出力を上げること。防衛翌日から日々勉強を誓い、6冠目が懸かる19日の棋王戦第4局や4月以降の名人戦へ向け「大きな舞台なので、それにふさわしい将棋を指したい」と意欲を語った。 (筒崎 嘉一) 

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