扇千景さん　エネルギッシュな人生、働く女性のさきがけ　負けん気の強さで宝塚の娘役ホープに

2009年11月、文化勲章の親授式を終え、記念写真に納まる坂田藤十郎さんと妻の扇千景さん
Photo By 共同

　元女優で、女性初の参院議長を務めた扇千景（おおぎ・ちかげ、本名林寛子＝はやし・ひろこ）さんが9日午前7時56分、食道胃接合部がんのため東京都の病院で死去した。89歳。神戸市出身。密葬は近親者で行った。エネルギッシュに活動し、タレント候補から議長にまで上り詰めた女性国会議員のパイオニア。歯に衣（きぬ）着せぬ言動で、永田町内外で大きな存在感を放った。

　宝塚女優から、結婚引退を経て、参院議長まで務めたエネルギッシュな人生は、働く女性のさきがけだった。

　大学受験を父親に反対され、友人が入学志願書を送った宝塚を受験し合格。負けん気の強さで娘役ホープとなった。子育て中の40代に出演したフジテレビ「3時のあなた」では、司会のみならず、体験リポートや取材にも飛び回った。スタジオでは台本を持たない司会ぶり。頭の回転の速さと、持ち前の行動力、判断力、度胸に政治の世界からの声がかかった。

　夫の藤十郎さんは地方公演に出向き、1年の半分は東京の自宅を離れる生活。互いの仕事を尊重しながらも、「どこに行っても1日1回、電話で話します」と夫婦円満が支えだった。自身の政界引退から藤十郎さんが亡くなるまでの十数年は「初めての2人暮らし。新婚生活のつもりで過ごしていた」という。藤十郎さんをしのぶ会では納骨を前に「家からお墓に行ってしまうので、余計寂しくなる」と涙を拭い、63年連れ添った夫への思いを語っていた。