扇千景さん逝く 89歳 女優から女性初の参院議長 次男・中村扇雀「僕にとって母は政治家」

[ 2023年3月14日 04:50 ]

2001年、保守党のCM撮影で笑顔を見せる扇千景党首
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 元女優で、女性初の参院議長を務めた扇千景(おおぎ・ちかげ、本名林寛子=はやし・ひろこ)さんが9日午前7時56分、食道胃接合部がんのため東京都の病院で死去した。89歳。神戸市出身。密葬は近親者で行った。エネルギッシュに活動し、タレント候補から議長にまで上り詰めた女性国会議員のパイオニア。歯に衣(きぬ)着せぬ言動で、永田町内外で大きな存在感を放った。

 この日夕、都内の自宅前で取材に応じた次男で歌舞伎俳優の中村扇雀(62)は「僕にとって母は政治家。“歌舞伎は兄(鴈治郎)に任せて政治家になりな”と言われたこともあった。政治家は天職だった」と話した。亡くなる2日前が最後の会話。孫の中村壱太郎(32)が京都・南座で公演を行っており、その様子を伝えたら「安心した」と言っていたという。最期は兄弟夫婦の4人でみとった。

 親族のみの葬儀は11日に営まれ、扇雀は「叙勲の時の純白のドレス姿で、議員バッジを着けた。棺には家族の写真などをたくさん入れた」と明かした。

 今年1月末に嘔吐(おうと)した際に受けた検査でがんが見つかった。2月上旬には、20年11月に死去した夫の歌舞伎俳優・坂田藤十郎さんとの思い出の地であるハワイ旅行を予定していて、本人も驚いていたという。

 1954年から57年に宝塚歌劇団で娘役として活躍。藤十郎さんとは映画「海の小扇太」(55年公開)での共演をきっかけに58年に結婚。宝塚を退団していたが女優に復帰し、フジテレビのワイドショー「3時のあなた」の司会も務めた。

 一方、第2次世界大戦時の疎開経験から「平和には政治の安定が必要」と考え、自民党議員とも交流。77年の参院選全国区に、福田赳夫首相(当時)らに口説かれ出馬、初当選した。

 94年に離党。新生党、新進党、自由党で小沢一郎衆院議員と行動をともにしたが、たもとを分かち、00年に二階俊博衆院議員らと保守党を結成、党首に就任。自民党と連立を組んだ。同年の第2次森内閣で建設相と国土庁長官を兼務して初入閣。中央省庁再編を受けて初代国土交通相となった際には、自らを「扇の要」と呼んだ。自民党に復党後の04年に参院議長に選出。女性初の首相候補として名前が挙がったこともあった。

 国交相時代の02年6月、人間国宝となっていた藤十郎さんが京都の舞妓(まいこ)との51歳差不倫を“ご開帳”写真とともに「フライデー」に報じられた時には「うちの主人、頑張っているみたいね」などと笑い飛ばし、大きな話題となった。

 ≪03年旭日大綬章、10年桐花大綬章≫

 扇 千景(おおぎ・ちかげ、本名林寛子=はやし・ひろこ)1933年(昭8)5月10日生まれ、兵庫県出身。54年に宝塚歌劇団に入団。映画専科に配属され、在団中から数々の映画に出演。59年、日本教育テレビ(現テレビ朝日)「君はいま何を見つめている」で芸術祭個人奨励賞を受賞。03年旭日大綬章、10年桐花大綬章。

 ▽食道胃接合部がん 食道と胃のつなぎ目の上下2センチの範囲にがんの中心があるものを「食道胃接合部がん」と分類する。従来は、食道、胃のどちらかに偏っているか、細胞を見てどちらから発生しているとみられるかなどで「食道がん」か「胃がん」と決めていた。しかし、接合部のがんは特にリンパ節に転移するため、最近は独立した疾患として扱われるようになっている。肥満や夜遅い食事、高齢化などで逆流性食道炎が増えていることが原因といわれる。 

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