羽生九段「平常心で」 “普段通り”貫き追いつく 前日に順位戦勝利…気分よく決戦の地に

[ 2023年3月11日 05:00 ]

対局の地、佐賀県上峰町の大幸園で笑顔を見せる藤井王将(左)と羽生九段
Photo By スポニチ

 藤井聡太王将(20)=竜王、王位、叡王、棋聖含む5冠=に羽生善治九段(52)が挑む将棋の第72期ALSOK杯王将戦(スポーツニッポン新聞社、毎日新聞社主催)第6局第1日は11日午前9時に佐賀県上峰町の料亭「大幸園」で始まる。10日は同所で対局場検分が行われた。藤井が初防衛ヘあと1勝の3勝2敗で迎え、先手は羽生。

 この日、上峰町の最高気温は23度に達した。コートは無用の長物。「なんかもう暑いくらい。初夏みたいな感じですね」と話す羽生の表情に硬さや悲愴(ひそう)感は全くない。シリーズ成績2勝3敗。カド番に立ち、タイトル100期獲得に向けて残る2局の連勝が必須条件と追い込まれているにもかかわらず、だ。「もうかなり煮つまった場面ではありますが、平常心でいつも通り指せればと思います」という決意の言葉も特に角張ってはいなかった。

 前日は東京都渋谷区の将棋会館で名人戦順位戦B級1組の最終局に臨んだ。A級昇格が懸かる中村太地七段(34)=現八段=に付け入る隙のない指し回しで97手での快勝。6勝6敗の指し分けで長いリーグ戦を終えたばかりだ。終局は午後10時28分。「でも順位戦にしては比較的早く終わったので、普通に休めました」という。なによりも白星で最終局を締めたのだから気分も軽いだろう。「また来期にいい形でつなげていければと思います」。一夜明けて羽田空港から航空機と九州新幹線を乗り継ぎ現地入りも、疲労の色はさほど見られない。

 第6局は先手番。今シリーズは2戦2勝と、一手早いメリットを存分に生かしている。「今までの対局のことを踏まえ、あす(11日)からどうやっていくか。ただ特別に指す将棋になるわけではない。普段通りです」。その「普段通り」でシリーズ2勝を奪っているのが羽生の空恐ろしさだ。

 藤井相手のタイトル戦で3勝目を挙げれば、その時点で史上初。夢の対決にふさわしいフルセットへとなだれ込むか。 (我満 晴朗)

続きを表示

この記事のフォト

2023年3月11日のニュース