羽生九段「変な手」で3連勝 守りの要・銀 自王のそっぽに向かせ…怒とうの猛攻撃

[ 2022年10月15日 05:10 ]

<王将戦挑戦者決定リーグ戦 近藤誠也七段・羽生善治九段>近藤七段に勝利した羽生九段(撮影・尾崎 有希)
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 将棋の第72期ALSOK杯王将戦(スポーツニッポン新聞社、毎日新聞社主催)挑戦者決定リーグは14日、東京都渋谷区の将棋会館で1局を指し、後手の羽生善治九段(52)が84手で近藤誠也七段(26)を下した。羽生は開幕3連勝で暫定首位をキープ。近藤は1勝2敗と黒星が先行した。

 百戦錬磨のベテランが持ち味を存分に発揮した。快勝とも言うべき棋譜を残し、若手の近藤を一蹴した羽生の表情からは、安堵(あんど)感とともに余裕がにじみ出る。

 「ずっと難しい展開。終盤は歩のない形になってこっちもギリギリかなと」

 棋士用語で「難しい」とは「互角」の意。つまり土俵中央で組み合っている状態だ。自分のペースに持ち込むにはリスクを承知で攻めを繰り出すしかない。羽生にとってその1手は38手目の△1四銀。守りのカナ駒を自王のそっぽに向かせるとは、なんと大胆な…。

 「ちょっと形は悪いんですが、駒をどんどん前に進めるしかない。変な手ですが、一番いいのではないかと」

 一見悪手のような端銀に近藤は「ちょっと動かれてよく分からなかった」と明かす。17分考えて▲3八金と上がったのを見た羽生は、昼食休憩を挟む31分の“中考”を経て△3五歩とねじ込んだ。「歩を合わせ、攻めは細いんですが、結果的にはよかった」。50手目の△5五角で飛車とともに3筋へ猛攻撃。左辺の侵略に成功し、あとは右辺に構えた相手王上空にラッシュを重ねて寄せ切った。

 タイトル獲得100期に王手をかけている羽生も、9月27日に52歳となった。リーグ最年長だが、開幕3連勝はその年齢を感じさせない充実ぶりだ。藤井聡太王将(20)=竜王、王位、叡王、棋聖含む5冠=への挑戦権獲得には最短距離にいる。「残りの対局もしっかり指したい」と、さりげない言葉に気合が充満していた。 (我満 晴朗)

 ≪近藤2連敗≫先手番ながら痛い星を落とした近藤。羽生の50手目△5五角に対し1時間17分の大長考で▲4六歩と対応したものの「それが悪かったとすると、その前から悪かったのかも」と悔やんだ。4日のリーグ初戦で兄弟子でもある前王将・渡辺明名人(38)=棋王との2冠=を破る好スタートも、以降2連敗。「今後も一局一局頑張っていきたい」と話した。

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