京都の名刹・鹿王院での怪談朗読劇に観客もぞくっ

[ 2022年10月12日 16:33 ]

京都・嵯峨の鹿王院で朗読会を開催した、まつむら眞弓と三味線の川合絃生さん
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 【佐藤雅昭の芸能楽書き帳】北海道からは早くも雪の便りが届き始めた。本州は紅葉の季節の本格到来が近い。京都では右京区嵯峨の名刹「鹿王院(ろくおういん)」が紅葉の名所として有名だ。

 その鹿王院の客殿でスポーツの日の10日夕と夜の2回、東映京都撮影所所属の女優まつむら眞弓(年齢非公表)が朗読劇「於露新三妖異噺(おつゆしんざあやしのはなし)」を上演した。

 まつむらにとってライフワークとなった京言葉での朗読劇は当コラムでも何度か紹介してきたが、「始める」ことより難しいのが「続ける」こと。2010年に京福電鉄の嵐電車内で明治期に活躍した落語家・三遊亭円朝の怪談噺「牡丹灯籠」と、小泉八雲の「耳なし芳一」を披露したのを手始めに12年以上も継続し、今では海外公演も実施するほど。今回の演目「於露…」は7年ぶりの再演となった。

 作品は、その「牡丹灯籠」を新釈で大胆にアレンジ。椿小路に住むところから椿比丘尼(つばきびくに)と呼ばれる女性の1人語りで物語は進行。ちなみに若狭の小浜などにも伝わる比丘尼とは800年近くも生きている伝説上の不老長寿の人物で、八百比丘尼(はっぴゃくびくに、地方によっては“やおびくに”)とも呼ばれている。

 椿比丘尼を含めると登場人物は6人。比丘尼を京言葉、劇中に出て来る5人を江戸弁で演じ分けて魅了したが、その一人芝居を津軽三味線「ひびき」会主の川合絃生氏の伴奏がさらに盛り上げた。

 「嵐電での会でお世話になった方が鹿王院に取り次いでくれて実現しました。とても厳かで、静かで、怪談に向いているというか、雰囲気のあるお寺です」

 まつむらはそう振り返ったが、長い参道にはLEDキャンドルや牡丹灯籠を並べて置くなど演出にもこだわった。「おかげさまで観光客や他府県の方、もちろん近隣の方からも問い合わせを頂きました」と、“まつむら朗読”の広がりを実感している。

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