最後のセンバツ実況に臨んだMBS・森本栄浩アナウンサー 球児と歩んだ36年のアナ人生を語る

[ 2021年4月1日 21:10 ]

センバツ実況を行うMBS・森本栄浩アナ(撮影・成瀬 徹)  
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 高校野球通の名物アナ、MBS・森本栄浩アナウンサー(59)が1日、「第93回選抜高等学校野球大会」の決勝で、同局アナとして高校野球の最後の実況を迎えた。「後輩が花道をという配慮でしょう。でも、最後というのは割り切ってます。いつも通りに実況するだけ。ボクの36年分の高校野球への思いを言葉にしたい」と平常心でラストに臨んだ。

 85年入社の森本アナは、翌86年3月からセンバツの実況を担当して今年で36年目。10月に定年を迎えることで、今大会の決勝が最後の生実況となる。

 森本アナが高校野球に魅せられたキッカケは、1973年夏の甲子園2回戦・銚子商対作新学院戦。作新学院の絶対的エース右腕・江川卓投手(65、野球解説者)が注目された大会だった。小学6年だった森本アナはテレビ観戦。銚子商がその剛速球右腕に真っ向から挑み、雨中の延長12回に押し出し四球でサヨナラ勝ちした。「これが高校野球だ」。森本少年は感動し、「一丸野球」の銚子商ファンになった。

 3日後に甲子園球場で高校野球を初観戦した。北陽(大阪)の有田二三男投手(65)が高鍋(宮崎)を相手にノーヒットノーランを達成した試合。「北陽には阪神の岡田(彰布)さんがいた。その時は知らなかったけど」。滋賀県の実家から兵庫・西宮の甲子園球場まで2時間以上かかったが、「甲子園の近くの伯父宅に泊まり、足しげく通った」。 

 なんと甲子園出場300校の校歌が歌えるという特技もある。銚子商の校歌は「わずか18秒で終わるんです。史上最短」と説明。強豪校の校歌をスラスラ歌うと皆、驚いた。

 東山高を経て、甲子園球場から北へ約4キロの場所にある関学大に進学したのは「たまたま」と言う。1年の頃から「スポーツアナになる」という目標へまっしぐら。授業の合間を縫って甲子園だけでなく、大阪、兵庫県の近隣の野球場へ足を運び、プロ野球ウエスタンリーグ、学生野球の試合を観戦。スタンドで試合実況の練習。「いろんなアナの実況を録音し、研究しました。目標にしていたのは、NHKの鈴木文弥アナ。ラジオでの描写力は飛び抜けていた。よどみなく、多彩な言葉が出てくるのは凄かった」。

 鈴木アナ(13年に88歳で死去)は64年東京五輪開会式のラジオ中継や、女子バレー日本代表が金メダルを獲得した試合を実況し、「金メダルポイントです」との名言で有名だ。森本アナは「ラジオをやりたかった」と、鈴木アナのように描写力を発揮できるラジオが今も好きだ。

 就職活動では高校野球を中継するNHK、ABC、MBSに照準。最初に内定が出たMBSに入社した。アナウンサーとしてのデビューは86年の第58回センバツ1回戦・池田対福岡大大濠戦。この試合、7―3で勝った池田が、最終的には春2度目の全国制覇した。

 実況で1番の思い出は「95年センバツ1回戦で銚子商がPL学園に勝った試合をラジオで実況したこと。銚子商の放送はこの1試合だけですから」。

 実況だけでなく「MBSに入ってよかった」と思うことがある。「抽選会や、キャプテントークというのがあります。この20年担当し、本大会以外にもセンバツに深くかかわらせてもらってます」。

 大会開幕直前に、出場する各校主将が集まり、開かれる『キャプテントーク』のインタビューを担当。93年のセンバツで優勝した上宮(大阪)の黒川洋行主将はキャプテントーク、開会式の入場行進前のスタンド下、優勝後の宿舎でと、何度も取材した。25年後、智弁和歌山の内野手として出場したのが、上宮・黒川主将の次男・史陽内野手(現楽天)だ。「親子2代を取材。アナウンサー冥利(みょうり)に尽きますね」。

 早実(東京)で甲子園を沸かせた日本ハム・清宮幸太郎内野手(21)も「私のことを覚えてくれていて、プロ入り後も球場で会うとあいさつしてくれます」。さらに、「プロに進まず大学や社会人に進んで、指導者になって再会するのが最大の楽しみですね」と語った。

 中継前には体調管理に余念がない。毎春、花粉症にも悩まされるが「実況中にクシャミをしたことはない。集中してるからでしょう。甲子園球場の放送席には砂ぼこりも舞いますが、マスクを着けなくても大丈夫」と豪語。唯一心残りがあるなら「地元の滋賀県勢の優勝を実況できなかったことぐらい」と苦笑いした。

 高校野球実況とは、の問いに「高校野球は敗者が主役となる唯一のスポーツだと思います。それをどう伝えるか」と回答。「選手達の思い出になるよう実況を」と語った。

 ◆森本 栄浩(もりもと・しげひろ)1961年10月4日、滋賀県出身の59歳。東山高、関学大を経て85年、毎日放送に入社。スポーツアナとしてプロ野球、高校野球、バレーボール、プロレスなどを担当。また、97年10月から15年3月まで同局制作の全国ネット「皇室アルバム」のナレーターを担当した。趣味はクイズ。学生時代にMBS「アップダウンクイズ」で優勝。ABC「パネルクイズアタック25」では年間チャンピオンに輝いた。

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