大河「麒麟がくる」脚本家・池端俊策氏 「光秀が死ぬシーンは書きたくなかった」

[ 2021年2月7日 20:58 ]

NHK大河ドラマ「麒麟がくる」最終回の明智光秀(長谷川博己)(C)NHK
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 【牧 元一の孤人焦点】想像を超える結末だった。NHK大河ドラマ「麒麟がくる」で、光秀(長谷川博己)が本能寺の変を起こす主因は信長(染谷将太)による「将軍殺害命令」。そして、秀吉(佐々木蔵之介)に敗れた光秀の生存を思わせる終わり方。脚本家の池端俊策氏(75)に真意を聞いた。

 ──物語の結末をどう描こうと考えた?
 「この話全体を端的に言うと、光秀と信長の友情話。光秀は信長と大変親しい関係を続けてきた果てに殺さざるを得なくなる。殺して万歳ではなく、殺した時の痛みを描きたいと思った」

 ──本能寺の変は?
 「どうすれば本能寺に行けるだろうかと、ずっと考えながら書いていた。こうすれば本能寺に行けると気づいたのは36、37回あたりで、それまでは答えが出ていなかった。答えから逆算して書いていると思われるだろうが、私はそうしないようにした。人間というのは、その時その時の喜怒哀楽で生きていて、誰かと毎日付き合っていても10年先、20年先のことは分からない。『あ、こんなことになってしまった…』というのが本能寺。見た人に、自然に思ってもらえたのだとすれば、そういうことだからだと思う」

 ──結末を決めずに書いていて不安は?
 「本当に本能寺に行けるかと、一抹の不安は絶えずあった。でも、そこが面白いのではないか。途中葛藤がないと、予定調和になってしまう。光秀は、目の前にいる信長を殺すわけだから、必ず何かあると信じて書いた」

 ──本能寺の変の主因が「将軍殺害命令」になったのは?
 「光秀は第1話で母親に『あなたは土岐源氏だから』と言われる。子供の頃からずっと言われてきたのだと思う。源氏の武士にとって、頭領である足利氏は特別なもの、最も大事なもので、たぶん、帝よりも先に立つものだと思う。それだけではなく、光秀が初めて足利義輝に会った時、素晴らしいと思い、この人が自分たち武士の頭領だ、この人を担いで生きていきたいと思った。その思いが残っている。それを『殺せ』と言うのは非常に残酷で、彼がいちばん反発することだと思った。ドラマは主人公の心情を描くもの。この説はどこにもないが、彼の心情に触れることを原因にしたかった。ドラマを作る者として、そこがいちばん肝心なところだと思った」

 ──将軍殺害命令に必然性はある?
 「信長は光秀に、秀吉の加勢で中国に行けという。その中国には将軍がいる。将軍があてにしている毛利、毛利があてにしている将軍。そこらへんは一体で、将軍を殺してしまえば、毛利が上洛(じょうらく)する大義名分がなくなる。だから、信長にとって将軍を殺すのは良い手だ」

 ──光秀は家康に後を託せると考えたか?
 「そこまで考えていたかどうかは分からない。とにかく、自分が信長を倒して、世の中を少しでも平和に導ければと考えたと思う。いろいろと打つ手の中で、家康は大きな存在で、自分と一緒にやってくれるのではないかと思ったのでは」

 ──本能寺の変で信長は何を思ったか?
 「信長は他者から愛されたい人だった。最も自分をよく分かってくれる光秀に認めてもらえるのは楽しいことだったと思う。2人はある種、親友で、その親友がまさか自分を殺しに来るとは思わなかっただろう。しかも、『将軍を殺せ』と命じた答えがそれだった。ああ、将軍を取ったんだという思いがあっただろう。それは怒りというより悲しさだろう」

 ──光秀は生きているのか?
 「私には、生きていてほしいという願望がある。歴史上は討たれたことになっているが、死骸をはっきり見た人はいない。いろんな説があって、関ケ原の戦いの頃まで生きていたという説もある。ありうることなら、生かしたいというのが私の気持ち。彼が死ぬシーンは書きたくなかった」

 ──いずれにせよ、光秀生存を思わせる結末は反響を呼びそう。
 「長谷川博己さんから『続編をやりませんか』と言われた(笑い)。今のところ、そういう気持ちはない。最後は明るい気持ちで見ていただきたいという思い以上はない」

 ──もし光秀が生きていたら家康を支える?
 「家康には家康の世界がある。光秀は距離を置いて付き合っていっただろう。娘の細川ガラシャもいるし、秀吉をどう見ていくか、家康をどう見ていくか…。面白い存在ではあると思う」

 ──面白い存在であるならば、続編もしくはスピンオフを見たい。
 「うーむ…(笑い)。今は長いものを書き終えて、少し離れたい気持ちだ」

 この物語で光秀は本当に生き延びたのか。生きているとすればその後どうするのか。それとも本当は死んだのか。その結論は視聴者の想像に委ねられた形だ。個人的には、本能寺の変をやり遂げた後の光秀の心情描写などをもっと見てみたい。大河の続編やスピンオフは極めて異例となるが、NHKにぜひ検討してもらいたいところだ。

 ◆牧 元一(まき・もとかず) 編集局デジタル編集部専門委員。芸能取材歴30年以上。現在は主にテレビやラジオを担当。

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