ファーストサマーウイカは、ほぼ吹奏楽でできている！「私の全てのベースです」

ドラムスティックを手にするファーストサマーウイカ（撮影・西尾　大助）
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　【夢中論】ファーストサマーウイカ（30）の原点は、中学時代に何げなく入った吹奏楽部にある。毒舌キャラでブレーク後、テレビ、ラジオ、芝居とマルチに活躍。音楽の印象は薄かったが、現場の要求に応じ千変万化するタレント力の源として「吹奏楽で得たものは、ずっと生きてます」と話す。22日に満を持して配信するソロ曲の名は「カメレオン」。題名と曲に込もる思いを語った。（桑原　淳）

　吹奏楽部に入ったのは「小学校で仲がよかった子が入ったから」。特に音楽が好きなわけではなかった。練習は「“文化部の体育会系”の頂点」と厳しく休みはなし。「毎日やめたい、やめたいと思っていた」という。

　それでも「みんなで音楽をつくって、ステージでウワーっと拍手をもらう時の感動や興奮。それをずっと体験していたいというのが、エンタメをなりわいとする私の全てのベースです」と話す。

　大きな財産の一つは音楽知識。「楽譜を読めるようになり、海外のヒット曲やJ―POPなどを演奏することで、技術や知識を得るのは大きかった」

　部では「やりたいと思ったことが一度もなかった」という打楽器を担当。それが高校時代のドラムでのバンド活動につながり劇団員を挟んで2013年にアイドルグループ「BiS」に加入。この時も音楽を聴く耳は生きたという。

　元々「人生の軸みたいのがそんなになく、流木タイプで生きてきた。芸は身を助けるといいますが、一つ楽器ができるだけで人生がこんなに変わるということも感じます」。　

　もう一つの財産は、楽団の一員として「自分が誰かのためになりつつ、喜びを得られる方法を考える」という思考が芽生えたこと。

　「みんなで何かをつくる時に、何の要素で支えられるかを深く考えるようになった。全ての音や楽器は意味があって足されている。なぜ楽譜にその音があるのか。それを考えることが全体につながる」と強調する。

　テレビのバラエティー番組も同じ。「何をもって自分が呼ばれたのか、事前に把握する必要がある。場に応じて、例えばシンバルみたいにバーンといくのか、スネアドラムのように地味にリズムを刻むけど必要不可欠な立場なのか。オーケストラですよね」

　意外にも「自分がスポットライトの真ん中で輝きたいというタイプではない」という。だからこそ、現場ごとにある「正解」をひたすら追求し、それに応えてきた。関西弁丸出しの毒舌ヤンキーキャラで売れたが、それは一つの顔にすぎない。今やテレビ、ラジオに引っ張りだこ。放送中のNHK連続テレビ小説「おちょやん」で好演し、女優としての評価も確立しつつある。

　30歳を迎え、ソロデビューという新しい挑戦をする。

　音楽への愛が高じたというよりは「自分の部屋、という位置づけですね」という。「音楽って、正解がないのが救い。本人がいいって言えばそれでいいし、気に入るか気に入らないかは聴く人に委ねられる」。厳しい生存競争からつかの間、羽を休める場所。「他のアートでその欲求を満たすことができないので、ソロを選んだ」と話す。

　曲名の「カメレオン」は、景色によって自分の“体の色”を変えてきたウイカの代名詞のようだ。器用に立ち回っているように見えるが、歌詞では「100％さらけ出した自分を受け入れられるのか？」と問いかける。

　「人は100％を見ようとしてない。テレビの編集のように、その人の見たいところだけを見ている」。ネット社会になり、1度の失言が100％と捉えられかねない現代。そんな中で「人によって違う顔を見せるなんて、当たり前でしょ？って思う」としつつも「バラエティーの姿もラジオでの下ネタも全部私。よそ行きとか、どれが偽物だとかはない」と言い切る。

　世間にはこびない。これからも“本当の自分”で勝負する――。そんな決意を、大好きな音楽に託している。

　《ギャップをテーマに》「カメレオン」はシンガー・ソングライターの阿部真央（31）が作詞、作曲。事前にウイカへの取材を行い、それを参考に書き上げた。他人からのイメージと自分のギャップをテーマにした激しいロック調で、全編を通じて、吐き捨てるようなパンクな歌唱が聴きどころ。「題名や歌を聴いて“私の歌だ”と思った。だけど真央さんは“自分のことを書いた”という。ということは、みんなギャップを持ってるんだと思う。聴いた方に“自分の曲だ”と思ってもらえたらうれしいです」と話した。

　◆ファーストサマーウイカ　1990年（平2）6月4日生まれ、大阪府出身の30歳。高校卒業後すぐ、地元の劇団に5年間在籍。13年に「BiS」に加入するが14年に解散。15年に「BILLIE　IDLE（R）」に加入し、19年にバラエティー番組でブレークした。芸名は本名の「初夏（ういか）」とその英訳に由来。