棋士いろいろ

[ 2019年4月25日 08:00 ]

眼鏡もオシャレな大橋四段
Photo By スポニチ

 【我満晴朗 こう見えても新人類】将棋の渡辺明王将(35)についての原稿をしたためた際、「多才な人」と表現したことがある。

 本業の将棋はもちろん、競馬や欧州サッカーの知識はもはや素人離れ。サッカーに関しては審判資格まで取得している。野球にも造詣が深く、生粋のヤクルトファン。週初めには相手を含めた先発ローテーションを調べ上げて週間勝敗を予想し楽しんでいるとか。加えてここ数年はカーリングに凝っており、暇を見つけては軽井沢(長野県)に赴いて実技体験。テレビ中継では「次の1投」を予想して観戦するというから、これはかなりの入れあげ方だ。

 漫画好きとしても知られ、現在は「宗桂~飛翔の譜~」(リイド社)の監修まで担当している。なにしろ奥様のめぐみさんは知る人ぞ知る漫画家だ。こちらの知識も半端ない。

 そう言えば5年ほど前は料理教室に通っていたんだっけなあ…と感慨にふけっていた4月16日の王将就位式。なんと、5月26日に山梨県で開催されるランニングイベント「スポニチ山中湖ロードレース」湖畔1週コース(13・6キロ)出場が発表された。ジョギングが趣味とはそれとなく聞いていたけど、まさか本格的なレースに挑むとは。

 本人にうかがうと「大人になった頃から体調維持のために走り始めた」という。都内の自宅を拠点に不定期ながらトレーニングを積み、最長10キロを走破。レベル的には1キロ7分ペースで、山中湖では「1時間30分を目標に完走したい」と、にこやかに話していた。

 その就位式から2日後。渡辺王将も出席した18年度将棋大賞授与式で関係者の注目を浴びたのが新人賞に輝いた大橋貴洸四段(26)だった。

 なぜか。

 写真を見ていただければ誰もが納得すると思う。

 イタリア代表も真っ青なアズーリのセットアップスーツに、ハッとするような緋(ひ)色のシャツとネクタイを合わせている。
 「スーツはオーダーなんです。値段ですか? それほど高くはないですけど…」

 あの藤井聡太七段と同期生でもある大橋は対局時でも原色スーツで臨む名物棋士として有名だ。時には燃えるような臙脂(えんじ)のジャケットに身を包むこともある。

 棋界のファッションリーダー、佐藤天彦名人(31)がかすんでしまうセンスを披露しているが、もちろん特異な外見だけではなく実力も際立っており、4月23日時点での通算勝率は・723。同期生の藤井から唯一2勝を挙げている実力派だ。

 兄弟子の渡辺が「多才な人」なら、大橋は「多彩な人」と言うべきだろうか。個性豊かな棋士の皆さんを取材していると、なんだかこちらまで楽しくなる。(専門委員)

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