ポニーリーグ

福山ウエスト 人間性育む指導法 人とのつながりを大切に 地元に根付いたチームづくり 

[ 2022年10月25日 06:00 ]

地元に根付くチームづくりを目指す福山ウエスト
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【月刊ポニーリーグ10月号】

 今年から新規加盟した「福山ウエスト」を特集する。また第3回秋季コルトリーグ関西大会では愛知木曽川の河田虎優希(こうき)投手が関西連盟では史上初の完全試合を達成した。

 目の前の1勝よりも、子供たちの未来を大切にしたい――。小中一貫チーム「福山ウエスト」は、中学硬式の部が今季からポニーリーグに新規加盟。福田代表が掲げる活動理念は、実に明確だ。

 「子供たち、親御さんとも楽しめるチームにしたい。上手になるためだけではなく、一人一人の人間性を高めてあげられるような指導を心がけています。チームとして勝つことを目的としていません」

 土日祝に行われる全体練習は半日のみ。「もう少し野球をしたい」と思える程度の、練習量にとどめている。そこで空いた時間は、各選手が有効活用。自主練習はもちろん家族や友達と過ごしたり、野球以外の部活動に精を出す選手もいる。

 ただ、福田代表は長年にわたりソフトボールの指導に携わってきただけあって、短時間の中にも濃密な指導エッセンスを組み込むことを忘れない。

 昨夏のチーム結成から携わるのが、開星(島根)のエースとして春夏通算3度甲子園に出場し、ソフトバンク、DeNAでプレーした白根尚貴氏だ。選手としてのキャリアは折り紙付き。ただ、自身の経験則に頼るのではなく、子供の目線に立った指導を心がける。白根氏は言う。

 「昔であれば1日2試合連投など当たり前でしたが、まずは野球を楽しむことができる環境を提供したい。もう一つは野球は失敗するスポーツ。プロでも3割打つのがやっとなのだから、そのあたりも伝えながら。子供たちから、どういう投手になりたいのか、どういう打者になりたいのかを聞き出して、それぞれに寄り添ってあげたいと思います」

 白根氏もまた、子供たちの輝ける未来に思いをはせる。現役を引退後は、四国IL・愛媛で2年間のコーチを経験。昨年からは、小中学生を対象にしたスクールで指導するようになった。野球の楽しさを伝えるだけはなく、自らが選手たちの手本となるような動きを実演することを心がける。

 「現代は情報があふれています。実際に体現してあげることができないと説得力がない。幸い、打って、走って、投げて、と見せることができる。いずれは野球界全体のレベルアップに貢献していきたいですね」

 専門性の高い野球の技術指導に加え、栄養士管轄のもとの食育、整形外科とタッグを組んでのケガ予防など取り組みは多岐にわたる。特に食育では地元の生産業者を訪問しての、勉強会&食事会などを実施。お茶当番制など保護者の負担もできる限り軽減した。その意図を福田代表は、次のように明かす。

 「福山の良さを小さいうちから伝えてあげたい。人とのつながりを大切にしてほしいし、いずれはこのチームに戻ってきて後輩たちを指導してもらえるようになってもらいたいと考えています」

 来春からはリーグ戦にも出場予定。地元に太い根をはったチームづくりを目指す。


 《愛知木曽川・河田 関西連盟初の完全試合》愛知木曽川の背番号1・河田が、関西連盟では史上初となる完全試合を達成した。

 「4回を終了した時から意識してました。球も走っていましたし、変化球の切れも良かったので、“いけるかな”と」

 右腕から投じる外角低めへのストレートと、鋭い変化を見せるスライダーが抜群だった。初回をわずか9球という滑り出し。徐々にギアを上げ、4番から始まる5回は3者連続三振を奪った。7イニング制の最終回も簡単に2死。最後は外角へのスライダーで、21個目のアウトを奪った。

 8強に進出した今夏の全日本選手権では背番号7ながら、初登板だった2回戦の久留米ボーイズ戦で7回3安打完封勝利。準々決勝で3連覇を達成した江東ライオンズに逆転負けを喫したが、王者をギリギリまで追い詰める投球を見せていた。

 「完全試合はもうないかもしれませんが、完封でも良いので、今後の試合も7回を投げきりたい」

 ポニーリーガーとして臨む、最後の公式戦。次のステージでの活躍を見据え、有終の美を飾る。

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