【内田雅也の追球】「猫を水」と「馬に水」

[ 2024年6月15日 08:00 ]

交流戦   阪神0-2ソフトバンク ( 2024年6月14日    みずほペイペイD )

<ソ・神>5回、犠打を決める木浪(投手・モイネロ)(撮影・須田 麻祐子) 
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 スペイン語のことわざに直訳すると「猫を水に入れる」がある。キューバ国営通信プレンサ・ラティーナの野球記事で読んだことがある。

 調べてみると「何かを成し遂げる」「成功する」といった意味らしい。水を嫌がる猫を説き伏せて連れていくのだから、確かに大成功だろう。

 キューバ出身のソフトバンク左腕リバン・モイネロも、このことわざを知っているだろう。この夜の投球がまさにそうだった。阪神打線は7回無得点だった。

 ただし、再三、好機はつくった。1回表はシェルドン・ノイジー、2回表は渡辺諒が二塁打を放った。4回表は原口文仁の二盗(ヒットエンドランで打者空振り)、5回表は送りバント、6回表は近本光司の二盗……と機動力もからめた。

 監督・岡田彰布は敗戦後に嘆いた。「ベンチでサイン出してもなんにもならへん。走れ言うて、みんな盗塁のサイン出してるんやで、走らんだけやで」。もっと足を絡めた攻撃ができたということだろう。9回表は先頭近本が出て、相手一塁手はベースを空けていたが結局スタートしてもファウルや凡飛、三振で終わってしまった。

 モイネロに対しては7回のうち5回は得点圏に走者を置いた。それでも「あと1本」が出なかった。走者得点圏では9打数1安打(内野安打)で6三振を喫した。チャンスで阪神打者は結果を出せず、逆にモイネロはピンチになるほど本領を発揮したというわけだ。

 「猫を水に――」と似たイギリスのことわざに「馬を水辺に連れて行けても、水を飲ますことはできない」がある。

 水を飲む、飲まないは馬が決めることで、無理やり飲ませることはできない。つまり、周囲が機会を与え、支援はできても、最終的に実行するかどうかは本人次第、といった意味になる。

 野球の攻撃で言えば、走者を「出す」「進める」まではベンチの作戦も絡むが、最終的に走者を「還す」のは打席の打者に任せるしかない。最後は選手なのだ。

 好機では自分で「何とかする」強い心がいる。さらに当欄で何度も書いてきたように「心は熱く、頭は冷静に」である。阪神のチーム得点圏打率2割4分2厘はセ・リーグ2位(13日現在)だがリーグ最高だった昨年の2割6分8厘を目指したい。冷静な頭で配球を読み、狙い球を絞りたい。 =敬称略= (編集委員)

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