【矢野燿大氏 直撃キーマン 2】阪神・佐藤輝 100打点目標に大声援の甲子園での一発「本当に楽しみ」

[ 2023年2月9日 05:15 ]

矢野燿大氏(左)と打撃について話す佐藤輝(撮影・大森 寛明)
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(1)から続く

 矢野 疲れていたり、結果が出なかったりしたときも「かっこよく」というのが輝との中のワードとしてあった。言葉は抽象的なんやけど、お互いの中で何となく共有できているっていうか。輝には輝にしか出せない魅力っていうのを持ち合わせている。そればっかり言ってたよな。

 佐藤輝 そうですね。

 矢野 昨季のクライマックスシリーズ(CS)も先発から外した(※1)。あれも、俺の中ではメッセージ的なものがあった。“育てる”というか、試合に使っていく中で成長を求めていたけど、CSで「目の前の試合をどうやって勝とうかな」って思った時に外すという選択をした。その意図は、感じてほしいなっていうのはあった。

 佐藤輝 いつでも期待してもらっている。期待されている中でしっかり「結果を出して当たり前」と思われるレベルまでいきたいです。

 矢野 結果を出すことは、みんなが考えていること。そこだけにとらわれると、ホンマにしんどくなったり、野球が全然楽しくなくなったりする。だから「姿勢」を見ていた。例えば「子供の見本になろうぜ」とか。結果ばかり求めにいかないように、その手前の話を言った。そういうものは気付いてくれたんじゃないかな。今年も多くのファンが輝の「姿勢」を見に球場を訪れると思う。

 佐藤輝 今季から始まる予定の制限がない声出し応援は初めて。昨季とは違って、本格的にルールとして声を出しての応援がOKになるので、スゴく楽しみです。

 矢野 全部を分かっているわけじゃないけど、輝の魅力として、いい意味で「鈍感力」っていうのもあるかもしれへんなと思う。ヤジをマイナスに捉えてプレーしてる感じはあまりなくて。メディアでも1年目から露出が多いけど、いい意味で鈍感な感じがする。それってプロではある意味必要な部分。声援にしろ、ヤジにしろ、輝にはあまり関係ないと思う。

 佐藤輝 その大歓声の中でホームランを打つと、より盛り上がる。本当に楽しみのひと言です。

 矢野 ホームランもええけど、俺としては100打点ぐらい稼いでほしいな。“俺で勝たせた”という試合を増やしてほしい。時には犠牲フライだったり、タイムリーだったり。ホームランってもちろん魅力的やけど、勝敗に関係ない場面で飛び出すこともあり得る。勝たせる一打で100打点いったら、ホームランも40本ぐらいいけるし、打率だってある程度高い数字が残る。やっぱりチームの勝ちに貢献できる一打は、ファンの印象にも残るよな。

 佐藤輝 大台のシーズン100打点はまだ達成していないので、一つの大きな目標になります。歓声っていう意味でも、点が入った時が一番盛り上がるし、勝ちにつながる。そこは大切にしていきたい。

 矢野 俺がドラフトのくじ引きで当てた唯一の選手(※2)。タイガースの選手の中でも、輝に集まる注目度は高いし、本当にどこまで伸びしろがあるのかな…という魅力がある。一緒にやってきた時もそうやけど、自分を信じて、小さく見積もることなく、でっかいところにチャレンジしている輝を見たい。

 佐藤輝 ありがとうございます。頑張ります。

 (※1)佐藤輝は昨年10月8~10日のDeNAとのCSファーストSでは3試合を通じて計10打数2安打(1本塁打)。同12日のヤクルトとのファイナルS初戦でも4打数無安打3三振に終わり、翌13日の第2戦では昨季のレギュラーシーズン、ポストシーズンを通じて初めて先発を外れた。

 (※2)20年10月26日のドラフト会議では阪神、巨人、ソフトバンク、オリックスの4球団が佐藤輝(当時近大)を1位指名。2番目にクジを引いて「当たり」をつかんだ。矢野氏は監督在任中に競合抽選には5度参加し、18年は藤原(大阪桐蔭→ロッテ)と外れ1位・辰己(立命大→楽天)、19年は奥川(星稜→ヤクルト)、21年は小園(市和歌山→DeNA)を外した。

 【取材後記】印象に残ったやりとりがある。佐藤輝が今キャンプ、三塁一本で練習していることを明かした際、矢野氏が「うれしそうやな」と笑った部分だ。昨季は三塁73試合に加え、右翼でも115試合に出場。固定位置がないのは器用さの裏返しとも言えるが、佐藤輝はホットコーナーに強いこだわりがあった。

 7日の第2クール終了時点で三塁以外の位置に就くことはなかった。フリー打撃中の打球捕球にも積極的で、より生きた球を捕る日々が続く。捕球より送球に不安定さが散見されるものの、一塁はグラブさばきに定評がある大山が守り、多少ブレても「捕ってくれる」という安心感は必ずプラスに働く。シーズン開幕まで50日あまり。「三塁・佐藤輝」の完成形を楽しみに待ちたい。(八木 勇磨)

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2023年2月9日のニュース