【内田雅也の追球】「自制心」が呼んだ大量点 佐藤輝と木浪がもぎ取った四球の価値

[ 2022年9月8日 08:00 ]

セ・リーグ   阪神9―1ヤクルト ( 2022年9月7日    甲子園 )

<神・ヤ>4回無死満塁、木浪は押し出しの四球を選ぶ(撮影・平嶋 理子)
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 阪神の大勝を呼んだ4回裏の大量6点は佐藤輝明、木浪聖也の四球が光った。2人とも本来は四球が少ない打者だからこそ、目をひいた。

 この回、連打での無死一、二塁で佐藤輝がボール球に手を出さず、強引さを自分で戒めていた。内外角、直球変化球をすべて見極めた。

 この無死満塁に木浪は粘った。ヤクルト先発・高梨裕稔が得意とするフォークを念頭に置いていたのだろう。引きつけ気味のタイミングでファウル5本はすべて速球だった。10球目スライダーを選んで四球。押し出しで先取点をもぎ取った。

 この1点で続く梅野隆太郎は「楽に打席に入れた」と、三遊間突破の左前2点打。2死後、近本光司が満塁走者一掃の三塁打とつながった。

 四球が少ないと書いた佐藤輝、木浪だが、目指す「好球必打」には、悪球に手を出さずに辛抱できることが肝要になる。「打席自制心」と呼ばれる。いわゆる選球眼をはかる指標の一つに「BB/K」がある。四球数を三振数で割った数値である。1以上(つまり四球数が三振数よりも多い)の打者は相当に優れていると評価される。

 今季、佐藤輝は43四球(リーグ7位)、120三振(同2位)で0・36でしかない。木浪はわずか4四球、13三振で0・31だ。ちなみにリーグ最高は宮崎敏郎(DeNA)で38四球、26三振の1・46もある。村上宗隆(ヤクルト)は102四球(同1位)、103三振(同4位)で0・99だ=成績は6日現在=。

 佐藤輝も木浪も積極的な打者だが、悪球にも手を出し、選球眼も悪いという傾向が見てとれる。ただ、佐藤輝は昨季、四球わずか25、実に173三振で0・14だったことを思えば、相当に改善されている。シーズン終盤を迎え、悪癖が改善されてきた兆候と言える連続四球だった。2人とも他の打席では三振も喫したが、好機で選んだ四球は価値があったと覚えておきたい。

 就任当初「超積極的」を掲げた監督・矢野燿大の弱点、いや裏側である。こうした「自制心」が打線のつながりを生む。あの回、打線がつながったのは、辛抱や粘りで四球をもぎ取った2人の姿勢を続く打者たちが見ていたからだろう。=敬称略=(編集委員)

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2022年9月8日のニュース