進む地方球場開催も、コロナ禍の制約続くプロ野球

[ 2021年6月27日 09:00 ]

草薙球場
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 ちょっぴり薄暗い照明にも味がある。プロ野球はリーグ戦が再開し10日が経過。コロナ禍の緊急事態宣言の影響などで、5月までは数試合が開催地変更を余儀なくされた地方球場での試合開催が行われている。

 ソフトバンクの「北九州」、オリックスの「ほっともっと神戸」という“準本拠”を除けば、22、23日に金沢、富山で行われた巨人主催のDeNA2連戦が今季初のプロ野球の地方球場開催。パでは日本ハムが26日ときょう27日のロッテ戦を静岡・草薙で戦っている。日本ハムは本拠地の札幌ドームが東京五輪のサッカーで使用するため、今後は前半戦だけで那覇、旭川、釧路、帯広での試合が待ち構えている。

 コロナがやってくる前、地方球場での試合時は、練習中に選手やコーチにグラウンド状況を質問するのが常だった。内野手には土の特徴や一、三塁線付近のわずかな傾斜によるボールの転がり方(切れ方)、土の硬軟によるバウンドの仕方など。外野手には芝生の長さや、手入れの仕方による注意点。外野フェンスのクッション性など、自分が試合に出るわけでもないのに、情報収集していた。また、これは地方球場も本拠地でも同じだが、打席ではバックスクリーンの形状などで投手の投球の見え方の違いがあり、選手によって好みも分かれる。

 調子の良かった右打者が、ある地方球場でピタッと当たりが止まった。あまりにも打席内容が悪かった翌日に聞くと「この球場はスリークオーター気味の左ピッチャーのリリースが、バックスクリーンから外れちゃうんです」との答え。確かにバックスクリーンが少し小さめ目だったりする。

 地方に行けば、その土地の名産や、偉人を絡めたり、成績上の相性などを調べて、本拠地開催とはちょっと趣向を変えたネタで記事を書いたりもする。試合前に「昨日はおいしいもの食べたの?」とか「〇〇が有名らしいよ」等々。雑談から話しが広がって、面白いエピソードを記事に加えたりしたものだ。

 コロナのワクチン接種が進んでいる。だが、移動や外食などは通常モードまで戻るのは難しい。美味しいものを自由に食べにいくどころか、試合前にグラウンドに降りて選手らと雑談ができるようになるのも、もうしばらく先。大声を出さずに、おとなしく観戦しなければならないファンの皆さん同様、コロナ禍の制約はまだ続く。

 地方球場にまつわる、あるエピソードを一つ。数年前、ある打撃タイトルの常連選手が、地方遠征に行った際の話し。宿舎ホテルで年配の女性が重い荷物を階段で運んでいたのを不憫に思い、手伝うと、いたく感謝されたという。そして「体格のいい方ですね?お仕事は何をなされているんですか?」と言われたそうだ。聞けばその女性、同じリーグの他球団のファンだったという。「僕もまだまだですね。もっと頑張らないと、と思いました」。そんな裏話、笑い話も地方開催の醍醐味の一つだけど、今は球場での出来事だけで辛抱するしかない。(記者コラム・春川 英樹)

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2021年6月27日のニュース