【内田雅也の追球】「歴史」への「秋の旅」――阪神、日本シリーズへ10泊11日のロード

[ 2019年10月3日 08:00 ]

甲子園で練習する阪神ナイン
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 練習開始のずいぶん前に記者席に座ってみた。甲子園は静かだった。無人の球場に姿を見せたのは最初、阪神園芸のグラウンドキーパーたち、次いでウオームアップの準備のため、トレーニングコーチ・伊藤敦規が姿を見せた。この後、選手たちは三々五々、一礼してグラウンドに飛び出していく。

 静かだが、心地よさが伝わってくる。レギュラーシーズンを3位で勝ち残り、クライマックスシリーズ(CS)に挑むことができる。こんな日の練習は幸せだろう。そんな思いで眺めていた。

 球団広報によると、3日も練習、4日は甲子園で練習した後にファーストステージの地、横浜に移動する。決戦は5日のデーゲームに始まる。

 さらに4日に出発してから、DeNAとのファーストステージ、巨人とのファイナルステージを最長6試合戦うとして、帰ってくるのは14日の深夜になる。つまり10泊11日の長期ロードに向かうことになる。

 本拠地・甲子園球場を高校球児に明け渡す恒例の夏のロードでも近年はこれほど長くはない。異例の「秋の旅」となる。

 この旅は、新たな歴史の扉を開くことになるかもしれない。CSを勝ち抜き、日本シリーズに進出し、そして日本一となる可能性まで開けているのだ。日本シリーズで勝てば、あの1985(昭和60)年以来、史上2度目の快挙となる。

 実は、9月30日にCS進出を決めた試合後、甲子園の通路で監督・矢野燿大の労をねぎらった。その際、「新たな歴史をつくってください」と声をかけた。「はい。がんばります」と応えた矢野は分かっている。

 阪神という老舗球団がいかに歴史や伝統の上に成り立っているのか。他球団が「いくら金を出しても欲しい」という歴史と伝統の重さを、矢野は分かっている。

 そして、人間はやはり歴史に学ぶことだ。前回、CSを突破して、日本シリーズに出た2014年の監督・和田豊(現球団本部付テクニカルアドバイザー=TA)は当時、どうだったか。

 CSを前に和田は「無の境地でいる」と語っていた。「あとは、ファンを喜ばせよう、という気持ちでいる」

 これはまるで、今の矢野が繰り返すセリフと同じではないか。「誰かを喜ばせる」はやはり、大きな力となる。それは家族でも、両親でも、恋人でも、ファンでも……誰でもいい。今季貫いてきた「喜ばせる」姿勢が「歴史」を切りひらくことになる。
=敬称略=(編集委員)

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