楽天・銀次 完璧急造捕手も辛さ実感「痛いと言ったら怒られる」

[ 2019年4月8日 17:37 ]

9回からマスクを被った銀次(撮影・井垣 忠夫)
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 【伊藤幸男の一期一会】楽天・銀次内野手(31)がプロ14年目で1軍初体験の捕手を見事に務めた。7日のオリックス戦(京セラドーム)で9回からマスクをかぶると、松井祐樹投手(23)―フランク・ハーマン投手(34)―森原康平投手(27)の150キロ剛球&変化球計67球を受け止めた。劣勢を跳ね返そうとベンチ入り捕手2人に代打を送ったため生じた「緊急シフト」ながら、捕球は完璧だった。

 おまけに盗塁阻止まで。守備に就く前、光山バッテリー兼守備作戦コーチから「二塁送球はワンバウンドでいいんだぞ」と言われながら「ノーバウンドで投げられます」と答えたのはプロの意地だろう。

 捕手は辛い――と改めて実感したのは延長12回2死、代打・マレーロのファウルチップが左足レガースを直撃した場面だ。銀次は一瞬顔をしかめたが、すぐ構え直すと6球目の150キロ直球で右飛に仕留め試合終了。陽気なゼローズ・ウィーラー内野手(32)は「救世主」をハグで称えた。

 試合後。銀次は報道陣の取材を終えると、左膝付近をしんみりみつめた。「ゲキ痛です。痛いです。でも痛いって言っちゃダメなんですよね。さっき、足立にそう言われました」。この日、レガースとミットを借りた1歳年下から「捕手としての心得」を聞いたのだろう。

 野球用語の捕手とは別に、慣用句的に「女房」と呼ばれる。「主人」である投手を支え、気持ち良く「投球」してもらうことから命名されたのだろうが、味のある言葉だと思う。一昔前は「パーン」と乾いた音を出すため、衝撃と痛みに耐えつつミットの綿を抜く捕手もいたと聞く。投手に気持ち良く仕事させるためには、少々のケガも厭わぬ覚悟が必要だ。

 昨秋の日本シリーズ。MVPは3セーブをマークし、ソフトバンクの2年連続日本一に貢献した森唯斗投手(27)ではなく甲斐拓也捕手(26)だった。「甲斐キャノン」も検索ワードで急上昇した。
 野球の華は160キロ剛球を投げる投手、特大アーチをかけるスラッガーに偏りがちだが、地味なポジションにもスポットライトが当たるのはうれしい限りだ。 

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