【斎藤隆氏】アストロズWS初制覇を支えた“世界一の人間力”

[ 2017年11月16日 11:30 ]

ワールドシリーズ中に米メディアからの取材を受ける斎藤氏
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 アストロズのワールドシリーズ初制覇は、野球界に一石を投じる勝利だったと思います。もし、選手総年俸が30球団トップのドジャースが勝っていたら、「やっぱりお金」となったでしょう。アストロズはその半分ほどで、開幕時の総年俸は約141億円で全体の18番目。資金面のハンデを補ったのが、ここ数年のドラフト戦略とデータ重視のチームづくりでした。

 4年前の13年までは3年連続で100敗以上と低迷していました。しかし、そのことで手にしたドラフト上位の指名権を有効に活用し、スプリンガー、コレアら才能豊かな選手を獲得。これに、ジェフ・ルノーGMのデータを駆使したチーム編成が見事にはまり、「フライボール革命」とも呼ばれるメジャーのトレンドにマッチした強力打線をつくり上げました。

 でも、ワールドシリーズを現地で取材すると、それだけでは結論づけられない「何か」があったのではないかと感じました。例えば、今季限りでの現役引退を表明したベルトラン。シリーズは代打要員でしたが、経験豊富な40歳の存在感は際立っていました。試合がない日に彼が「みんな、練習やるぞ」と声を掛けるだけで、アルテューベのようなレギュラー組まで参加してきました。そして、A・J・ヒンチ監督の人間性。会見では、選手をリスペクトする言葉を何度も聞きました。信頼関係が築かれているからこそ、不調のブルペン陣を使わずに、先発投手を後ろに回す大胆な戦い方もできたのです。

 MLBは00年代前半、アスレチックスのビリー・ビーンGMのデータ重視の手法を描いた「マネーボール」が脚光を浴びましたが、今や30球団全てが同じようなシステムを構築しています。その意味では、情報をインプットする時代は終わり、むしろ、大量の情報から何を省いて、どう処理していくのか、アウトプットの時代なのでしょう。

 ドラフト戦略やデータ分析が注目されたアストロズのワールドシリーズ初制覇ですが、その足りない部分を補ったのが、人間の経験だったり、選手との信頼関係だったのではないかと思います。 (パドレス球団アドバイザー)

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