阪神一筋で引退 安藤優也氏が「会わせる顔がなかった」人とは

[ 2017年11月16日 11:30 ]

コーチ就任会見を終えた安藤氏
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 阪神の安藤優也氏(39)が今季限りで現役を引退した。虎一筋16年の功労者。かつて6年間、阪神担当をしていた私は、安藤からこんな言葉を聞いたことがある。

 「会わせる顔がなかった」

 これだけ聞くとその時は一体、誰に対してなのだろうと思った。

 法政大時代は右肩の故障などもあって大学通算7勝4敗。プロへの道を諦め、卒業後は、地元大分の銀行に就職して軟式野球に転向しようと考えていた。だが、迷っていた時にのちに夫人となる大学の同級生の勧めもあって、銀行の内定を辞退して社会人野球の強豪・トヨタ自動車に入社。そこで活躍したことでプロへの道を切り開き、01年ドラフトの自由獲得枠で阪神に入団した。

 内定をもらっていた銀行にはプロ入り時の契約金を預金した。だが、ギリギリまで迷って夢へ挑戦する道を選び、内定を辞退した責任をずっと忘れられなかったという。だから、当時の人事部長に対し「迷惑をかけたから、会わせる顔がなかった」と言っていた。

 プロ入り後は、2年目の03年に中継ぎで51試合に登板し、18年ぶりリーグ優勝に貢献。リーグ制覇した05年には先発として11勝を挙げた。その後、友人の結婚式で偶然、その男性と再会する機会があったという。「あの時は本当に申し訳ありませんでした」と頭を下げた右腕に対し、上司になるはずだった男性は「こういう風に活躍している君を見ていると、これで良かったのかなと思うよ」と言ってくれた。思いがけない言葉に「許されるわけじゃないけど、ほんの少しだけ楽になったかな、と」。当時の心境を明かしていたことがあった。

 あの時、トヨタ自動車へ入社したから、16年間のプロ野球生活を送ることができた。何より、本人の覚悟と努力があったからこそだと思う。自分の選んだ道の責任を、全うする人だと感じた。

 来季からは阪神の2軍育成コーチに就任し、また新たな挑戦が始まる。就任会見では「厳しくしていきたい」と所信を表明し、10月末から、西宮市内の鳴尾浜球場で秋季キャンプの残留組の指導にあたっている。

 責任感が強く誠実な人柄から、現役時代もチームメートからの信頼は厚かった。そして名前の通り優しい。その人柄を知る誰もが感じるように、きっといい指導者になるんだろうなと、楽しみにしている。(記者コラム・細川 真里)

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