誠也がWBC辞退で侍に3つの試練 右打者不足・手薄な外野・潤滑油不在…世界一へどうする栗山監督

[ 2023年3月1日 05:05 ]

キャンプ施設の入り口へ向かうカブス・鈴木=メサ(共同)
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 日本野球機構(NPB)は28日、カブスの鈴木誠也外野手(28)が第5回ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)の出場を辞退すると発表した。25日のオープン戦前に左脇腹の張りを訴え、精密検査を受けていた。外野手が少ないチームで、貴重な右の長距離砲としても期待され「3番・右翼」を担う予定だった男が不在に。09年の第2回大会以来、14年ぶりの世界一奪還を狙うチームに暗雲が垂れ込めた。

 正午過ぎ。前日に強化合宿を打ち上げた侍ジャパンが、宮崎から名古屋に空路で移動する直前だった。NPBが鈴木のWBC出場辞退を正式に発表。空港のロビーのテレビで流れていた情報番組が速報するほど、その衝撃と注目度は大きかった。

 世界一奪還への試練が突きつけられた。栗山監督は鈴木が出場を表明した際に「本当にうれしい。来季に向かう大事な時に決断してくれた」と語っていた。鈴木は前回17年のWBCに出場し、大会MVPに輝いた19年のプレミア12と21年の東京五輪では全試合で4番。国際大会の経験が豊富だっただけに、不在となる影響は大きい。

 <1>右打者の不足 鈴木以外の外野手は近藤、周東、これから合流するヌートバー、吉田の全員が左打ち。右の大砲である鈴木は、左打ちの4番・村上の前後を固める役割を期待されていただけに想定していた打順の組み替えを余儀なくされる。スタメンは9人中6人が左打者となる可能性まである。

 <2>手薄な外野 5人中3人が名を連ねた大リーガー外野手の合宿参加がかなわなかった。規定により本番までは直前の強化試合の2試合しか出場できず、内外野の連係は不安視される。ロースコアの展開が多い国際大会で1点を防ぐ連係は勝敗を分けるだけに、21年まで広島でプレーして他の選手を熟知する鈴木の辞退は守備面の影響も大きい。

 <3>潤滑油が不在 ともに東京五輪に出場した村上と個人的に連絡を取り合うなどメジャー組とNPB組をつなぐ潤滑油としても期待されていた。鈴木自身も「ほとんど日本で一緒にやっていた選手たち。試合中に僕がいじっていた選手もいた。(大谷)翔平とかダルさんのことを(生でプレーを)見ていない選手もいる」と自身の役割を自覚していた。年齢の垣根を越えたコミュニケーションの音頭を取ることができる貴重な存在。米国の球歴が1年とダルビッシュや大谷よりも浅く、NPBに顔なじみの選手が多いだけに、辞退は痛い。

 5人の外野手では最多だった日米通算196本塁打の鈴木は「3番・右翼」を担う見込みだった。最長で全治まで5~6週間かかるとの情報もあり、WBCどころかメジャーの開幕に間に合うかも微妙な状況だ。右の大砲でムードメーカーでもある男の出場辞退。その影響は計り知れない。(神田 佑)

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