ブランドマスもいいけれど “ハコスチ”って分かりますか?

[ 2021年1月24日 07:13 ]

ハコスチと筆者。このサイズのマスが川の中にたくさん放流されている
Photo By スポニチ

 【奥山文弥の釣遊録】何年か前、長野の犀川畔でニジマス大好きな友人から「ハコスチをどう思いますか?」と聞かれた時、「発泡スチロールの特殊な箱ですか?」と聞き返しました。

 「いやいや違いますよ、魚の名前です」と会話したのを覚えています。

 群馬県の水産試験場では、何年も前からブランドマスづくりに一生懸命でした。多くの場所でつくられている赤身の食用魚より、野生魚のような強い引きを遺伝的に持つ魚を育種しました。それがハコスチです。実験データでも普通に養殖したニジマスよりも引きが強いそうです。群馬では有名らしい箱島養魚場のマスとスティールヘッドを掛け合わせた魚です。スティールがなまってスチールとなり、頭文字を取った名前です。

 それが利根川に放流されたと聞いて、ではどんなに凄い魚なのか体験しようと出かけたのが4年前です。その時は2匹ヒットさせてファイトしました。大河川の流れに泳ぐニジマスなのでそれなりの引きでしたが、凄いとは感じなかったため、素直にSNSで名前のことも含めて評価したら大荒れしました。

 そして今シーズンは利根川ではなく、群馬県上野村の神流川上流に設定されたハコスチキャッチ&リリース区間に行ってきました。

 昨年11月上旬、現地に着くと紅葉真っ盛りで非常に美しい景色でした。空いている場所があったので、そこでキャスト開始。釣り方は普通のフライフィッシングとは異なり、重いフライを使うのでミャク釣りのようなスタイルになります。それで10フィートという長めのロッドを使いました。

 午前中3匹のヒットがあり、全て40センチ以上でしたが、川の規模が小さいせいか瀬の中を走り回るという感じではなく、ぐいぐいと耐え、なかなか川底からはがれないような引きでした。

 午後遅く、人がいなくなった淵で釣ってみました。ヒットした魚はスババババーンと、ジャンプを繰り返し、岩に体が当たるのではないかと思うほど凄いヤツがいました。50センチオーバーのその魚にはこれが本来のハコスチの引きなのかと感心しました。

 ハコスチは選抜育種なので、その姿はニジマスと全く変わりありません。この魚をブランド化することに苦労していると試験場の方も言っていました。利根川本流では両方交ぜて放流しているためよく引くニジマスなのか、ハコスチなのか水の中に入ってしまえば分からないとも。また3回ほど釣られると元気がなくなり、実験データのような引きをしなくなるとも。

 ブランドとは開発者の自己満足ではなく世間からの評価です。私が最初に感じたように魚だと想像できなかった名前もブランドになっていないのではないでしょうか?

 この魚を購入し放流した釣り堀のオーナーからも同じような意見で、またこの大きさで白身なので食用としても価値がないと酷評していました。

 よく引く魚なら、暴れられるだけの水域も必要です。釣り堀や小河川には似合わないのです。ならばやはり利根川のような広大な水域に集中して放流しニジマス本来の活動ができるようにして利根川ブランドに徹するとか。さらに魚の染色体操作や選抜育種など品種改良して妙な付加価値をこじつけるよりも、この日本でニジマスが成長していける環境を整え、ルールをしっかり作ってそれを守らせる方が大切だと思います。

 人間が生活するためにズダズタにした大河川のその一部の区間を有効利用するために外来魚であるニジマスは最適です。
 大きくて、よく引いて、美しいニジマスを釣りたいものです。
(東京海洋大学客員教授)

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