酒井藍 父の言葉がなければ…小学生から高齢者にまで愛される“藍ちゃん” 夢は新喜劇のレジェンド

[ 2024年3月25日 11:02 ]

いつも明るい笑顔の酒井藍
Photo By スポニチ

【酒井藍インタビュー(2)】

 ―お話を聞いているだけで芸人という職業を心底楽しんでいらっしゃるように感じます。これまでの人生で最初に芸人を意識された時のことは覚えていらっしゃいますか?

 「小学校の頃から新喜劇ラブでした。お楽しみ会で台本を書いてみんなで演じてみたり、公園の滑り台の上に友達と上って、誰も見てないのにギューギューになりながら大木こだま・ひびきさんのモノマネしたり(笑い)。イチビリでしたね」

 ―小学校の頃からずっと新喜劇が好きで、その夢をかなえたのはすごいですね。

 「途中、モーニング娘。に少し浮気しましたけどね(笑い)」

 ―(笑い)

 「高3で進路の話になった時、両親にNSC(吉本総合芸能学院)に行きたいと言ってみたんですが、“絶対あかん!”“アホなこと言うな!”と言われて。でも大学行っても何もやりたいことはないので、授業料払ってもらう母にも申し訳なく思って、だったら働こ、と思ったんです。親が安心する公務員かなと思って、専門学校に行って警察の事務に受かりました」

 ―警察学校にも行かれたんですよね?

 「1カ月行きました。警察官志望なら半年なんです。事務やのに、朝に警察官の後ろについて同じだけ走るんですよ。もう、ほんまキツくて。日記帳みたいなのを書いてたんですけど、ずっと“雨降れ雨降れ”って書いてました。」

 ―辛い日々でしたね(笑い)。

 「ほんまですよ!私は新喜劇に行きたいのに、走るのが一番嫌いやのに、なんで毎日こんなんことせなあかんの、クソー!となって“雨降れ雨降れ雨降れ、私は新喜劇に行きたいんだー”とか書いてました(笑い)」

 ―警察官志望と一緒は大変(笑い)。

 「持久走はほんま無理でした。いっつもドベ。そしたら、同期の警察官の子らが走ってる私のそばに近寄ってきて“藍頑張れー!”“最後の力を振り絞れー!”とか言ってくれるんです。みんないい子なんです。応援してもらってうれしいんです。でも…私、恥ずかしい…と思いながら走ってました」

 ―(笑い)

 「機動隊の訓練もあって、盾持って走っているときは“私、新喜劇行きたいのに盾持って走ってる…”とか思ってました。でも、警察は1年半だけですけど、すごくお世話になったし、勉強にもなりました。初めてNGKで単独ライブをしたときは、お客さんの6割が警察官だったんですよ。どんな悪いヤツが入ってきてもすぐ捕まえられるなあ、ものすごく安全なイベントやなあ、と思いながら客席を見てました」

 ―警察に勤められているときにオーディションを受けたと思うのですが、ご両親には伝えられたんですか?

 「パソコンで画面を立ち上げて、何も言わずに父と母が座ってるところに“吉本新喜劇金の卵オーディション”の募集ページをスーっと見せたんです。そしたら“え?まだあきらめてなかったん?”とお母さんが言って、お父さんはあきれながら“わかった、受けてみいや、ほんだらわかるやろ”ってなったんですよ。やった!です(笑い)。堂々と受けさせてもらいました」

 ―受かってお父さんはなんとおっしゃったんですか?

 「え?って言ってました(笑い)。もう反対しにくくて、母と妹に”なんであんなこと言うたん!”と責められてました」

 ―一念岩をも通す、ではないですが、見事にやり通したということですね。

 「でも、ほんまに新喜劇しか経験がないので、お笑いの世界に入ってピン芸人さんとか漫才師さん、落語家さんのすごさもすっごいわかります。ストイックにされてる皆さんを見て私も頑張ろ、とも思いましたし、テレビ番組とか出させてもらって勉強もさせていただきました」

 ―藍さんは舞台だけでなく、テレビにも出て人気の幅を広げている気がします。

 「ありがたいことに、おじさま、おばさま、おじいちゃん、おばあちゃんからも声をかけてもらうことが多くて、きのうも奈良の神社にお詣りにいったら、京都から来てた団体の高齢の方々が“藍ちゃんやんか!”となって“ちょっと触らせてー”“なんかフクフクしいわー”とか、奥にホンマもんの神様がいらっしゃるのに言っていただきました」

 ―ビリケンさんみたいですね(笑い)。

 「ロケとかしてたら“藍ちゃん、何歳なったん?”とか聞かれる時があるんです。そしたら、ちょっと低い声で“37歳です”って言うんですが、“え?”って聞いた人の時が止まるときもあるんですよ(笑い)。気ぃ使わせる年齢になってきてんねやと思いながらも、それも楽しいなと受け入れてるんです」

 ―37歳にはとても見えません。

 「いえいえ(笑い)。この間も小学生の子が“藍ちゃーん”と言いながらこっちに来てくれて、私が“ありがとう”って言ったら、“藍ちゃんかわいー”と言ってくれて、“ありがとうなー、あなたもかわいいよー”って言ったら、“私6歳、藍ちゃん何歳?”と聞くんで、“さんじゅーななー”って答えたら、横にいた中学生2、3人がえ?みたいな顔でこっちを二度見してました。その反応がおもしろくて、中学生に“ごめーん、バイバイ”と言ったりして、そういうのが最近は楽しくなってきました(笑い)」

 ―とにかくまだまだ若い37歳。今後の夢があれば教えていただけませんか?

 「やっぱり、夢は新喜劇に骨をうずめることですね。末永く皆さんに新喜劇の子と思ってもらえたらうれしいなと思うし、そのためにしっかり頑張って、いま65周年ですが、70周年、先は100周年くらいまで続くように、次の人にバトンを渡せるように頑張ろうと思ってます」

 ―歴史と伝統があって、関西では知らない人がいない劇団ですもんね。

 「そうなんですよね。先日、タクシー乗ったときに藍ちゃん頑張ってんなーと言われたんですが、オレらの頃は岡八郎がおもろかったなーと運転手さんに言われたんです。私もそう言われるようになるのが一番の夢かな。若い劇団の子がタクシーに乗ったときに、酒井藍はおもろかったでーと言われるようになりたいですね。そういう意味では間寛平GMはすごいです。寛平ちゃんはおもろいと言われ続けてる。私もそうなれたら最高ですね」
=終わり

 【取材を終えて】インタビューの直後、こんなことがあった。こちらが撮影の準備をしているとき、酒井は取材に立ち会った吉本の若い女性社員に向かって「いつもスタイルが良くてうらやましいです」と声をかけた。女性は感謝の言葉を口にしたが、少し驚いた様子。頻繁に会話をする仲ではないのだろう。照れくさそうにしながらも嬉しそうな表情を浮かべた。
 「天性のリーダー。常にみんなのことを見ているし、パワーをくれる。初の女性座長は彼女しかいないと思っていた」と評するのは大ベテランの浅香あき恵。劇団員にも、社員にも、ファンにも愛される“藍ちゃん”。夢見る新喜劇のレジェンドになるのは、そんなに遠い未来ではなさそうだ。(江良 真)

続きを表示

この記事のフォト

「美脚」特集記事

「STARTO ENTERTAINMENT」特集記事

2024年3月25日のニュース