第3局明暗この一手 秀逸だった渡辺王将「▲7四歩」×「▲7七角」

[ 2021年2月1日 05:30 ]

スポニチ主催 第70期王将戦7番勝負第3局第2日 ( 2021年1月31日    栃木県大田原市・ホテル花月 )

王将戦第3局第2日・A図
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 結果的には渡辺のワンサイドゲームのようになった今局。スポニチ本紙観戦記者で指導棋士五段の関口武史がポイントを解説した。

 渡辺は封じ手の▲8二歩、4手後の▲7四歩(39手目)と一貫して攻めを継続する。永瀬は銀桂交換を甘受し、局面を落ち着かせようとするが渡辺はそれを許さない。

 ▲7四歩(47手目)~7七角(A図)が秀逸な手順で頭一つ抜け出す。▲7四歩は直後の△9五角の王手が気持ち悪く、選びにくい一手。続く角合いも△同角成▲同金の形が将来後手からの△8五桂が見えているだけに相当に指しにくい。だが盤上から後手の角を消すと▲7三角の王手飛車が猛烈に厳しいのだ。

 A図に戻り▲7七角に△8六桂も嫌な変化で、▲8八金△7六歩▲6六角△9八桂成と進むと先手大失敗。だが、△8六桂に▲5八王が軽妙な早逃げで、△7八桂成▲9五角△同歩にやはり▲7三角の切り返しが厳しい。▲7四歩、▲7七角は単独で見ると先手不利の選択だが、マイナス×マイナスがプラスになるように▲7三角が王手飛車という成功に結びつく絶妙の組み合わせだった。

 渡辺の盤面全体を見渡した広い視野に加え、常識にとらわれない柔軟な発想が難解な中盤戦を解き明かすカギとなった。永瀬は何とか目標の飛車を自陣に戻し粘るが、渡辺の▲2五飛(65手目)が眠っていた飛車を世に送り出す決め手級の一手。渡辺も局後「▲2五飛で手応えを感じた」と語るように双方の飛車の働きの差が形勢の評価に直結する形となった。有利となった渡辺は着実にリードを拡大していき、充実の内容で3連勝を飾り、3連覇へ王手をかけた。

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