【内田雅也の追球】阪神と日本ハム「競争」交錯の7回裏 責める気にならない小幡の姿勢

[ 2023年2月27日 08:00 ]

オープン戦   阪神6-8日本ハム ( 2023年2月26日    名護 )

<日・神>メンバー表を交換する新庄監督(左)と岡田監督(撮影・椎名 航)
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 名護の球場内監督室に入った阪神監督・岡田彰布を日本ハム監督・新庄剛志が訪ねた。コーヒーとたばこを手にしていてのあいさつだった。言わずと知れた阪神時代の先輩後輩である。

 「江越が本領を発揮しはじめましたよ」と新庄が言うと岡田は「江越の本領ってなんや」と返したそうだ。江越大賀は昨年10月、岡田が阪神監督に復帰した直後に発表となった交換トレードで日本ハムに移籍していた。

 試合後、新庄の会見を聞いていると、また江越の名前が出てきた。「よく打ったよね。追い込まれながら、あの低めの変化球を拾ってね」

 日本ハムが1点を追う7回裏、1死一、二塁。江越は0ボール2ストライクからカイル・ケラー得意のカーブを左翼線にライナーで運ぶ逆転決勝の2点二塁打を放った。中継が乱れる間に自らも生還を果たしていた。

 「いい試合だった」と新庄は言う。「みんなの競争意識でこうして粘り強い試合ができたんだと思う」。江越は1回表の守備で浅間大基が負傷し巡ってきた出場機会を物にしたのだった。

 阪神から見れば、この逆転されたプレーは痛恨だった。左翼フェンスで処理した井上広大から遊撃手・小幡竜平が中継し、ワンバウンドの本塁送球がわずかにそれた。捕手・坂本誠志郎が後逸して打者走者まで生還を許したのだった。

 失策は小幡についたが責める気にならない。小幡が送球をもらった時、すでに一塁走者・矢沢宏太は三塁を3歩ほど回っていた。タイミングは無理でも強肩で刺す姿勢も買いたい。何しろ、木浪聖也との遊撃争いで必死なのだ。新庄がたたえた「競争意識」は阪神にもある。

 しかも、この回の守りで小幡から何度か「準備」という言葉が聞こえた。臨時コーチ・鳥谷敬から教わった姿勢を実践していた。江越を打席に迎えた時も三塁手・佐藤輝明に「セーフティーバントがある」としぐさと声で伝えていた。バスターエンドラン失敗(遊飛)直後の1死一、二塁でまさかと思っていると、江越は本当に初球にセーフティーバントを敢行(ファウル)したのだった。小幡の勘、いや読みの鋭さに感じ入った。

 阪神はきょう27日、キャンプを打ち上げる。そして、開幕メンバーを争う競争はこれからが本番である。=敬称略=(編集委員)

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2023年2月27日のニュース