【内田雅也の追球】日本に来てどう変わるか 阪神外国人3投手「びーさ」から成長を

[ 2023年2月21日 08:00 ]

バッティングピッチャーで登板した阪神・ビーズリー(撮影・岸 良祐) 
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 阪神キャンプ地、沖縄・宜野座村野球場には冷たい風が吹いていた。前日までの夏日から「寒の戻り」、島言葉の「むどぅいびーさ」である。

 打撃練習に外国人3投手が登板した。L字型ネットを外し、マウンドから投げた。大リーグで言う「ライブ・バッティング」。本番(ライブ)に似た環境での投球だ。ただ野手は守備位置(シート)に就いていない。

 見たまま書けば、3人とも天候同様、内容はびーさ(寒い)だった。

 新外国人で先発として期待する右腕ブライアン・ケラーは新人・森下翔太や渡辺諒、板山祐太郎、島田海吏と対戦した4人全員に安打性のライナーを浴びた。速球も変化球も快打されていた。

 セットポジションでの投球タイムは1秒20~32と合格に届かない。クイック投法(スライドステップ)も苦手に映った。こんな情報は他球団スコアラーも記録している。

 救援タイプの新外国人右腕ジェレミー・ビーズリーは150キロ台速球に落ちる球もあったが、26球中11球がボール球で制球が心配になる。

 2年目のカイル・ケラーもカーブや昨年習得したフォークを投げていたが、同じく26球中11球がボール球。できるはずのクイックは使わず、タイムは1秒42~55だった。

 問題は日本に来てどう変わるかではないか。

 後に球団最多タイ6度も開幕投手を務めるランディ・メッセンジャーの1年目を思う。2010年、時期は早く2月6日、この宜野座で野原将志、上本博紀相手に39球投げ、ボール球は21球を数えた。速球は伸びを、変化球は切れを欠いた。

 開幕後も期待外れだったが、4月中に2軍に落ち、7月に1軍復帰すると見違えた。フォームを修正し伸びも切れもある投手に変身していた。

 この日の投球を見守った編成部国際担当の三宅徹は「彼らも危機感を抱いている」と話した。「ブルペンで周りの投手が皆いい球を投げている。このままじゃアカンと気持ちも入っている」

 米国の記者が近年の大リーグの状況を克明に記した『アメリカン・ベースボール革命』(化学同人)はデータやテクノロジーを駆使した「育成」がテーマだ。2003年発行のベストセラー『マネー・ボール』について<重要な項目、「成長」が抜けている>とある。

 「びーさ」な投球に、幸せを呼ぶという「ぱいかじ」(南風)が恋しくなった。=敬称略=(編集委員)

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2023年2月21日のニュース