悪ガキだけど優しい少年だった ジュースジャンケン提案した18歳の中田翔 長時間でも子どもたちにサイン

[ 2021年8月14日 11:41 ]

08年。新人合同自主トレで笑顔を見せる中田
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 とんでもない高校生だと思った。

 18歳の少年は、千葉・鎌ケ谷で行われた新人合同自主トレで30歳を過ぎているような報道陣を集め、「ジュース、ジャンケンをしよう」と提案してきた。

 大人に交じって10人ぐらいで行ったジャンケン。日本ハムのドラフト1位・中田翔は勝ち抜けすると、おごってもらったジュースをうまそうな顔で飲み干していた。

 そんなルーキーは、いまだかつて一人しか会ったことがない。
 優等生ではない。態度が悪いところも見ている。土足禁止の場所で、靴も脱がずに上がることもあった。先輩だけでなく、ときには報道陣から「オイッ!」と注意されることもあった。

 ぶら下がり取材をしていると、中田が水を口に含むと、そのままはき出して、周りにいた記者が慌てて避けるなんてこともあった。それを見て、少年は大笑いした。

 まさに、悪ガキだった。

 チームメートに暴力行為を働き、無期限出場停止となった。30歳を過ぎ、18歳の頃よりも自分の立場や周囲に与える影響も考えられたはずなのに…。それでも、中田は本当に悪いやつなのか?

 大物ルーキーがプロ野球の世界に入ると、もの凄い数のファンが押し寄せる。サインするとなれば、1、2時間も掛かるところを、中田はよくペンを走らせた。

 「子どもだけには書いてあげたい」

 サインを長時間すれば、体も冷える。野球選手として、これが正しい姿かは別問題だが、これまでたくさんの大物選手を担当させてもらったが、こんなことができる選手はいなかった。

 2011年3月、21歳の中田は東日本大震災の被災地へ義援金100万円を送った。前年の推定年俸は1200万円。まだ、1軍選手として一人前になる前の行動で、このときは本当に驚いた。

 今回の件、擁護するつもりはない。ただ、「ヤンチャさ」が目立った一方で、とびきりの優しさも見てきただけに、とても残念に感じる。(記者コラム・横市 勇)

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2021年8月14日のニュース