野球観戦の新様式 “生音”お預けの中…センバツでは録音での魔曲にも注目

[ 2021年3月19日 08:30 ]

球児に声援を送る甲子園スタンド
Photo By スポニチ

 ホームランの乾いた打球音、投手のボールが捕手のミットに収まる捕球音。選手の声。新型コロナウイルス感染拡大前の球場では鳴り物付きの大声援にかき消されていた「音」が、今では鮮明に聞こえる。聞こえていなかった音が聞ける一方でお預けとなってしまっている「音」もある。

 選手ごとに個別の応援歌があり、トランペットや太鼓で応援団がリードし、ファンが歌う。メジャーリーグにはない「日本式」の応援スタイルが奏でる音だ。感染拡大防止のため禁止されており、声は出さず、手拍子や拍手のみで応援に。新様式になって寂しい。

 巨人の「バタフライ」ではファンが一体となってタオルを回す。甲子園を一つにさせる阪神の「チャンス襲来」や男女別パートで歌い分け、獅子おどし打線を後押しする西武の「チャンステーマ4」、野球ファンなら誰でも歌える応援歌を数多く持っているロッテなど、各球団ごとに名物応援歌があり、本拠地チームのチャンスとなれば、その声援が球場のボルテージを最高潮にさせる。これこそが日本の球場だからこそ聞ける音であると思っている。

 もちろん現在の状況でも各球場ごとに工夫はしている。東京ドームは巨人のチャンス時にチャンステーマの音声を流し、福岡のペイペイドームではソフトバンクの選手の打席ごとに個別の応援歌を流し、雰囲気を演出。歌うことはできないものの、日本の球場“らしさ”が感じられるようになっている。

 応援は大きな後押しにもなるし、驚異にもなる。地響きのような大声援で流れが変わる瞬間も野球の醍醐味だ。何の気兼ねなく大音量で応援歌が歌える球場が戻ってくると信じてもう少しの間、打球音や選手の声など、応援でかき消されるはずの音を聞きたい。

 今日から選抜高校野球大会が開幕する。2年ぶりに甲子園に帰ってきた春の風物詩。高校野球名物の一つであるブラスバンドの生演奏も、とまではならなかったが録音での応援は認められた。智弁和歌山の「ジョックロック」に代表される魔曲の力が録音でも発揮されるのか、甲子園の魔物を呼び覚ますことができるのか。注目して見ていきたい。(記者コラム・小野寺 大)

続きを表示

2021年3月19日のニュース