斎藤雅樹に土つけた伝説の猛虎戦士 工事現場監督として街づくりの第2の人生に全力“登板”中
猛虎の血―タテジマ戦士のその後―(8)仲田幸司さん
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仲田幸司を覚えていますか。沖縄出身のサウスポーで、ニックネームは「マイク」。開幕投手を3度務め、1992年に14勝した男は、56歳の今、建築現場の現場監督として事故は絶対に起こさない信念の下、汗を流す。「どんなときでも胸を張ってやっていく」――。それがエースのプライド。阪神でともにプレーした掛布雅之氏や落語家・笑福亭鶴瓶にエールを送られながら、仲田は現場を守っている。
人懐っこい笑顔は変わらなかった。重機が行き交い作業員が慌ただしく動く建築現場で、ヘルメットをかぶった仲田は現場を指揮していた。
一日の作業は朝早く始まる。ミーティングで作業内容の確認と安全注意事項について報告を受け、注意を促す。現場を統括するゼネコンの責任者と打ち合わせし工事の進捗(しんちょく)をチェックする。担当するのは主に基礎部分。一つの油断が建物の安全性、耐震性に影響するから気が抜けない。基礎部分の杭(くい)の本数や深さ、コンクリートの量が設計通りか、常に確認し細かく写真を撮り万全を期す。冬は寒く、夏は暑い。ハードな環境だが、やりがいを感じている。
「似ているところがあるんです。野球と。ミーティングをして準備し確認し、そして実行する。現場は一つのミスが大事故にもつながる。命に関わるから、決して気を緩めることはできません」
基礎部分の工事が終われば、次の現場に移る。後日、関わった現場にマンションやショッピングセンターができ、多くの人の生活の拠点になったことを確認すると、笑顔になる。「気持ちがいいですね。決して目立つことはないけど、職人さんたちと一つになった結果、街ができれば本当にうれしい」。勝利投手になったときの充実感に似ているかもしれない。
83年ドラフト3位で入団し阪神が日本一になった85年5月12日のヤクルト戦で初勝利を完封で飾った。88、89、93年と3度の開幕投手を務めた。ボール連発で首脳陣をハラハラさせたかと思えば、はまったときは巨人打線も沈黙させる。89年7月の伝統の一戦では完封勝利で、11試合連続完投勝利中だった相手エース斎藤雅樹に土をつけた。
だが、その後は厳しい人生が待っていた。「悔いがあるとすれば、あのFA。阪神を出るんじゃなかった」。95年オフのロッテへのFA移籍から暗転。97年限りで引退し野球解説、ラジオのパーソナリティーなどにチャレンジしたが、露出は次第に減り、仕事も私生活もうまくいかない時期を経験した。そんな時に声をかけてもらったのが掛布雅之。「一度きりの人生。マジメに取り組め」とかつて自身のマネジャーで阪神OBの西浦丈夫が経営する建設会社「山河企画」を紹介された。「中途半端なままでは、応援してくれる人、現場の人に迷惑をかける。もう逃げない」。仕事に打ち込むことを誓い、現在に至る。
応援しているのは掛布だけではない。「マイク、元気か。メシを食おう」と昨年、連絡をくれたのが笑福亭鶴瓶だった。仲田のノーコンぶりをトークのネタにした縁はあったが、会うのは久しぶり。近況報告を笑顔で聞いた鶴瓶からは「マイクが関わった建物なんて危なくて入れんわ」と一流のジョークで、日々の頑張りをねぎらわれた。「逃げずにやっていれば、誰かが見てくれる。だから、今できることを精いっぱいやるしかない」。仲田は再び重機の動きに視線を走らせた。 =敬称略= (鈴木 光)
《野球との関わりは今でも 社会人クラブチームでコーチ》
野球との関わりは現在も続いている。日々の仕事をしながら、仲田は社会人のクラブチーム「京都ジャスティス」で投手コーチを務める。「もう10年くらいになりますね。投手としてはじん帯を痛めて、もう投げられないけど、ベンチでみんなと一緒に野球をするのが、やっぱり楽しい」といい、シーズン中の週末は京都に通う。現役時代の思い出は吉田義男、村山実の2人からもらった監督賞だ。プロ初勝利をあげた85年5月12日のヤクルト戦時は「これでお母さんに母の日のプレゼントを贈っときや」と吉田から10万円を渡された。村山との思い出は初めて開幕投手を務めた88年4月8日の広島戦だ。北別府学との投げ合い試合は0―3敗戦。「帰りのバスの中で村山さんが怒ってね。『若い投手が一生懸命投げたのに、なんで点を取ってやらんのや』とプンプンだったんです。その後、宿舎で監督室に呼ばれて自分も怒られるかと思った」ところ「よう投げた」と5万円を渡された。「いろいろあったけど、甲子園のマウンドという最高の場所を経験できたのは一生忘れない」と大歓声を懐かしんだ。
◆仲田 幸司(なかだ・こうじ)1964年(昭39)6月16日生まれ、沖縄県出身の56歳。興南では2年夏から3季連続甲子園出場。83年ドラフト3位で阪神入団。85年5月のヤクルト戦でプロ初勝利。92年には自己最多の14勝をマークした。95年オフにFAでロッテ移籍したが未勝利のまま97年に現役引退。通算335試合登板で57勝99敗4セーブ。阪神時代は背番号48と34。1メートル82、80キロ(現役時代)。左投げ左打ち。
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