山田哲人だって緊張する それを手なずけた者こそが頂点に立つ

[ 2020年9月24日 14:30 ]

ヤクルト・山田哲(撮影・島崎忠彦)
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 【君島圭介のスポーツと人間】今年7月に中日戦のマウンドに上がった巨人・堀岡は「めちゃくちゃ緊張していて、足が震えていました」と振り返った。育成出身で昨季も3試合に登板しているとはいえ、この日が331日ぶりの1軍登板だった。無理はない。

 緊張というのはやっかいだ。スポーツの場面に限らず、授業中に発言を求められた小学生から初めての取引先に出向くビジネスマンまで、この心理現象に押しつぶされ、本来の実力を出せないことが多い。

 同じ7月の広島戦で1軍デビューした中日のドラフト1位・石川昂も初打席は「めちゃくちゃ緊張した」という。甲子園のヒーローだけじゃない。ヤクルトのトリプルスリー男、あの山田哲でさえ今季の開幕戦では「初打席ですごく緊張した」と明かしている。ただ、その初打席で大野雄の直球を左中間席に打ち込んだ。

 まとめるとキャリアは関係なく誰でも緊張するし、緊張しても結果は出せる。

 そもそも緊張の正体とは何だろう。心理学なのか、生理学なのか、学術的にもはっきりしないが、近年の研究では「必要があって人間のDNAに埋め込まれている生理現象」だという説が有力だ。

 「危険を感じたときに出る体の反応」と定義され、その危険とはライオンやトラなど肉食獣に襲われる恐怖らしい。そして緊張特有の体の反応には理由がある。巨人・堀岡のように足が震えるのは、筋肉の硬直が要因だが、それは毛細血管を収縮させ、牙を立てられた際の出血被害を抑えるのに役立つ。顔のほてりは脳に血液を集めて意識を明確にするためで、心拍数の上昇(心臓のどきどき)は体をすぐ動ける状態にしているのだ。

 緊張はDNAレベルで脳が勝手に反応しているだけで、今は生命の危機ではないと正しく状況を理解することが大事だという。監督やコーチが、緊張する選手を送り出すときに「命まで取られる訳じゃない」と声をかけた話をよく聞くが、実はそれこそが的確な指示のようだ。

 もうひとつ、緊張の原因に重圧がある。これもほとんどは自分で勝手に作り上げるもので「失敗したら格好悪い」とか「負けたら恥ずかしい」という自己顕示欲の裏返しだ。でも本当に周囲に期待され、結果を求められる場合もある。例えばチャンスで打席に入るスター選手。山田哲は年間約600打席のほとんどを重圧の中で状態で立っている。

 山田哲はかつて打席では「打てなくて当たり前。絶対打つじゃなくて、ここで打てたらいいなと考える」と話していた。追い込まれた心理状態を作らずに、ヒーローになるチャンスとポジティブに捉えることで緊張を手なずけている。それが超一流による緊張対策だ。(専門委員)

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