エンゼルス大谷“防御率∞”の悪夢…1死も取れず5失点KO 実戦不足露呈「腕が振れてなかった」

[ 2020年7月28日 02:30 ]

ア・リーグ   エンゼルス4―6アスレチックス ( 2020年7月26日    オークランド )

<アスレチックス・エンゼルス>初回1死も取れずに降板する大谷(AP)
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 160キロが消えた――。エンゼルスの大谷翔平投手(26)が26日(日本時間27日)、アスレチックス戦で先発し、1死も取れず自己ワースト5失点で今季初黒星を喫した。18年10月に右肘じん帯再建手術(通称トミー・ジョン手術)を受け、693日ぶりの公式戦登板。空振りを一度も奪えず、直球の最速は94・7マイル(約152キロ)止まりだった。「防御率∞」の悪夢を生んだ理由は何なのか。

  6年前の14年夏。球宴初先発を控えた当時日本ハムの大谷は「自分は直球が持ち味で、今年は160キロが何度も出ています」と語った。以後、日本最速165キロまで伸ばし、米1年目の18年も100マイル(約161キロ)超えを連発。だが、約1年11カ月ぶりの復帰マウンドでその姿を見ることはできなかった。

 わずか30球、約18分で終了。「疲れる前に終わった」の感想は本音だろう。3安打3四球で5失点。0/3回の降板は、日米通じて自身初めてだ。打者6人に対し、空振りを一度も奪えなかった。

 「腕がいまいち振り切れていなかったかなというのは、全体的にある。ゲーム勘というか、打者を抑えにいく気持ちより球を投げることに集中していた」

 テークバックを小さくした新フォーム。直球の平均92・7マイル(約149キロ)は手術前の96・7マイル(約156キロ)より約7キロ遅い。スライダー、カーブも、2球しか投げられなかった宝刀スプリットも、全て手術前より4~6キロ遅かった。

 また、全30球中、15球がボール球。直球は16球中、ストライクゾーンに4球しか入らなかった。これまで三塁側を踏んでいたプレートの位置を一塁側にするなど試行錯誤した。

 大谷の実戦登板は紅白戦3試合のみで、対外試合はゼロ。本人は乱調に「それは言い訳にはならない」と影響を否定した。しかし、トミー・ジョン手術は他の部位から腱を移植するもの。腱が腕になじみ、球速や制球力を取り戻すには、どうしても時間を要する。

 コロナ禍により今季のマイナーリーグは中止。マイナーでリハビリ登板ができなかった影響は少なくない。同手術から5登板以上の対外試合を経て復帰した西武・松坂、カブス・ダルビッシュらとの過程との差は歴然だ。

 ジョー・マドン監督は、球数が少なかったことで「明日(日本時間28日)はDHで出場する可能性がある」と語った。大谷は登板翌日のスタメン出場が日本ハム時代の16年に1度だけ。「まずは切り替えて打席に集中したい」と話すが、1週間後の登板までに課題を少しでも減らしたい。

 《数字“割れない”》防御率の計算式は「自責点×9÷投球回」。大谷の投球回は0(記録上は0/3)で「5×9÷0」だが、数字を0で割ることができないため、防御率を「∞(無限大)」と表記することもある。1死取っていれば防御率135.00だった。

 ≪日本投手では大家以来の0/3回降板≫大リーグの日本投手で先発として1死も取れず降板したのは、02年エクスポズの大家友和(4月17日カブス戦で0/3回を5安打6失点)以来、大谷が2人目。大家は同年3試合目の登板で、防御率「∞」からシーズンが始まった先発投手は大谷が初めてだ。メジャー全体では昨季、アストロズの左腕マイリー(現レッズ)ら3人の先発投手が0/3回で降板している。

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