中日の“希望の光”A・マルティネス 東京五輪では日本の強力なライバルになるかも

[ 2020年7月28日 09:00 ]

中日のA・マルティネス(撮影・椎名 航)
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 今月1日に支配下登録され、低迷する中日の希望の光となっているのが、キューバ出身のアリエル・マルティネス捕手(24)だ。

 4日の巨人戦では球団OBであるディンゴ以来、20年ぶりに外国人捕手として出場。さらに、翌5日の同戦では91年ディアズ(ロッテ)以来、29年ぶりにスタメンマスクをかぶった。

 ただ、球史に名を刻むというのは、言い換えれば外国人捕手がいかに珍しいかを示している。

 ではなぜ、アリエル・マルティネスの獲得に至ったのか? 中日の前監督でスポニチ評論家の森繁和氏(65)が経緯を明かしてくれた。

 中日にはもう1人、マルティネスがいる。投手で現在、守護神を務めているライデル・マルティネスだ。

 監督時代も独自のパイプを生かすため、自ら中南米へ足を運び、スカウティング活動を行っていた森氏の目にとまったのはライデルの方だった。1メートル93の長身から投げ下ろす右腕。荒削りながら素材に魅力を感じていた。

 ライデルの獲得に向け、キューバへ渡った森氏。そこでキューバ野球連盟から打診されたのが、ライデルの獲得と同時にアリエルに日本の野球を学ばせることだった。

 すでにその時点で20年東京五輪で野球が正式種目として復活することが決まっていた。五輪は選手やスタッフの登録人数が限られているため、キューバとしてはアリエルに開催国である日本の野球を少しでも学んでもらい、選手としてだけでなく通訳、あるいはスコアラーとしても活躍して欲しい狙いがあったという。

 実はアリエルは母国ではインテリの部類に入る。将来的に指導者になりたい本人の意思もあり、体育大学出身。森氏によれば、幼少期から野球一筋というわけでなく、大学入学後に再び野球を始め、頭角を現したという。捕手として日本の野球を知るだけでなく、頭脳も武器となるアリエルをキューバは日本に送り込んだのだ。

 それを了承した森氏は「育成で」という条件付きで獲得した。もちろん2年で支配下登録されたのは、アリエル本人の努力の賜である。

 外国人捕手にとって大きく立ちはだかるのが言葉の壁。扇の要は投手とのコミュニケーションだけでなく、時には野手への指示も出さなければならない。通訳の協力を受け、必死に壁を突き破った。

 支配下登録されて1カ月にも満たない中で、20試合に出場し打率・340、2本塁打、9打点と日に日に存在感を増すアリエル。打撃だけでなく26日の阪神戦ではリーグトップ9盗塁をマークしている阪神の俊足・近本の二盗を刺すなど、強肩ぶりも見せている。

 来夏、金メダルを目指す侍ジャパンにとって日本の野球を知るアリエルは強力なライバルとなるかもしれない。(記者コラム・徳原 麗奈)

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2020年7月28日のニュース