研究熱心オリ山岡 魔球の正体は“抜けカット” 「意図的に投げられたら」描く青写真

[ 2020年6月12日 09:00 ]

5日の広島との練習試合に先発したオリックス・山岡のピッチング(撮影・成瀬 徹)
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 「たまたまカットボールがひっくり返って、シュートみたいになっちゃった。あれはでも、理想ですよね。ジャイロ回転の軸をズラして、こう…。あれ投げられたら、みんなバットを折れると思う」

 オリックスの山岡泰輔投手(24)が、こう語った1球がある。先発した5日の広島との練習試合。7回1安打無失点の快投で2年連続2度目の開幕投手を射止めた一戦。その最後の81球目、鈴木誠也のバットを見事にへし折ったボールが、それだった。「意図的に投げている人なんて、いないんじゃないですかね」。“魔球”の正体は「抜けカット」だ。

 試合後の山岡自身の分析によると、縦のカットボールを投じようとして偶然、回転軸がズレた。結果的に、シュートのような軌道を描き、ジャイロ回転のようになったという。

 「見たことないような球になっちゃって、誠也さんも驚いたんじゃないかな」。観戦した誰もが、鈴木が“完全に捉えた”と思ったはず。山岡本人も「普通(のボール)だったら、いかれていたでしょうね」と左中間スタンドへ叩き込まれるのも覚悟していたほどだった。それでも、侍ジャパンの主砲の相棒を真っ二つにした事実が、通常では考えられない“異常回転”だったことを物語っている。

 抜け球=失投だが、山岡が「打者目線では“抜けカットが1番打ちづらい”っていう話を聞いたんです」と話す通り、「抜けスラ」や「抜けカット」は見逃されるケースが目立つのは確か。だから「意図的に投げられたら…」と青写真を描く。

 「抜けカット」は今オフ、広島での自主トレ中に取り組んでいたとのこと。山岡自身理想とは異なるが、近いものとして、阪神助っ人のエドワーズのジャイロ回転の「ジャイロスライダー」、10年の球宴で当時日本ハムだったダルビッシュがカットボールの軌道で浮き上がる「ジャイロカッター」などがあり、現実味を帯びてくる。

 実は、超クレバーで研究熱心。金髪だったり銀髪だったり、ド派手な髪色の風貌でチャラそうに見えるけど。入団当初から多彩な変化球を身に付けていた一方で、チェンジアップやシュート、縦カットなどプロ仕様の新球種を少しずつ増やしてきた。「相手は昨季のデータで対応してこようとするけど、違う球種を混ぜることで、また引き離せるでしょ」。そのために入念な準備を欠かさない。「2年かけて1つの球種を身に付ける」のが持論。2年前からマスコミに新球習得に着手していると伝えるのは、他球団の強打者たちの脳裏に新球種の存在をチラつかせることが狙いで「対戦で有利に働くかもしれないでしょ」と駆け引きにもつなげる“野球脳”がある。

 実は、人一倍チーム思い。「優勝したいんッスよ」と事あるごとに口にする。チームを勝利に導く快投がエースの役目だと分かっている。縦横のスライダーとカットボールを自在に操り投げ分ける指先の技術は一級品。「投げられたら理想だけど、まあ…難しいかな~」と言葉とは反対に嬉しそうに笑った姿から、習得への意気込みを感じた。エースの進化が、チームの上昇に直結するはずだ。(記者コラム・湯澤 涼)

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