阪神・ボーア 甲子園の浜風味方に本塁打量産!“4番先輩”広澤克実氏が飛距離太鼓判

[ 2020年2月28日 06:00 ]

広澤克実氏との対談で、手袋なしでバットを振り続けた掌を披露してくれたボーア(撮影・大森 寛明)
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 阪神の第105代4番打者として今季の開幕戦を迎えることが確実視されるジャスティン・ボーア内野手(31)を、第81代4番の広澤克実氏(本紙評論家)が直撃した。甲子園の浜風、日本野球への適応、本塁打……。話が進む中で、逆にボーアが4番打者の先輩に質問攻めする結果となった。(構成・畑野 理之)

 広澤 私のボーア選手の第1印象は、これまでタイガースに来たたくさんの外国人選手の中でも、もっとも打球を遠くに飛ばす打者なんです。

 ボーア オオー、サンキュー!

 広澤 素晴らしいのは、テークバックとパワーポジションが天才的だ。

 ボーア テークバックを真後ろにすると体と一緒に内に入ってしまうので、それを防ぐために斜め上にもっていくことで、ちょうどいいポジションになる。それを意識している。

 広澤 いつ、何がきっっかけで?

 ボーア ある野球教室で、テークバックが内に入ってしまう悩みをもつ子どもを教えているときに“こうしたらどうだ?”と言ったことで直ったんだ。それが自分にもヒントになったんだ。

 広澤 他に打撃フォームでこだわっているところは?

 ボーア 一番大切にしているのはリラックスすることだ。固まってしまうと大きい筋肉も使えなくて、手の動きもぎこちなくなってしまう。なるべく手を自由に動かせるようにしている。

 広澤 子どもの頃から打球を飛ばすことができたの?

 ボーア いや、違うんだ。高校生くらいまでは広角に打ち分けるようなバッターで、ホームランが持ち味では決してなかった。大人になっていくうちにパワーがついてきた。

 広澤 打撃グローブをつけないのは?

 ボーア それは小さい頃から素手でバットを持っていて、しっかりと木を感じられて、一番しっくりくるからなんだ。

 広澤 データでは、皮手(袋)をしている時としていない時では、バットスピードは皮手をしている時の方が上がると出ている。

 ボーア うん、うん…。

 広澤 まあ、十人十色だけど。

 ボーア 手にしっかりと土をつけたり滑り止めを塗ったりしているし、手から直接に木を感じることで家にいるようなリラックス感を得られて打席に入ることをルーティンにしているから、大丈夫だよ(笑い)

 広澤 生まれはどこ?

 ボーア ワシントンDC。

 広澤 じゃあ初めてだろうね。日本には高温多湿の夏がある。

 ボーア マイナーリーグのときに、例えばマイアミなど高温多湿のところでプレーしたことがある。

 広澤 日本の夏は、おそらく経験したことのない湿度だと思うよ。

 ボーア 大丈夫だと思うけれど…(笑い)

 広澤 体調管理で気をつけていることって?

 ボーア しっかり食べること、しっかりと寝ること。コンディショニングコーチからも指示があるだろうし、ストレッチなど準備をしっかりとすることだね。

 広澤 タイガースファンは、ボーア選手にはホームランを期待している。すごい熱狂的なので少し打たない時間が続くと厳しい声もあるかもしれないが、気にしないでやった方がいい。

 ボーア プロの選手なので、結果が出なければそういう声も出てくるのも当然だろうし、それも含めてプロの野球選手だと思っている。その中でも、いかに自分のプレーができるようにするかを努力したい。

 広澤 本拠地の甲子園は土のグラウンドだ。

 ボーア キャンプ地の宜野座球場でだいぶん慣れたよ(笑い)。あと、打撃練習のときに一塁に就いて打球がくるのを待つのだけど、ここからはアメリカではなかったことなんだが、さらに横からノックが来るだろ? あれに集中するのが大変だったよ(笑い)。

 広澤 甲子園球場は両翼が95メートル、センターが118メートルしかなくて他球場と比較してもそれほど広くはない。

 ボーア でもモンスターなんだろ?

 広澤 それをモンスターにしているのは、風なんだよ。

 ボーア (通訳を制して)『かぜ』…。最近よく耳にするので『かぜ』というフレーズは聞き取れたよ(笑い)

 広澤 ハハハッ。ボーア選手のパワーなら完璧に捉えればスタンドまでいくのだろうけど、ちょっと詰まったり芯を外されれば風に戻されてしまうよ。だから風を利用しないといけない。

 ボーア 風が強いのは何度も聞かされたね。だから低くて強いライナー性の打球を打つ練習、それと風に逆らわない左中間方向への打球を意識している。

 広澤 そうだね。ホームランばかりを意識してしまうと打撃を崩してしまうので、ジャストミートを心がけてほしい。

 ボーア オーケー、わかっています。ホームランを打つことだけが野球ではないし、チームが勝つためにシングルヒットが必要なときは(単打を)狙っていくことが大事だと思う。

 広澤 その通りだね!

 ――広澤氏も阪神の元4番打者で、通算306本塁打の強打者でした。ボーア選手から何か質問はありますか?

 ボーア どこの球場が一番、ホームランを打ちやすかったですか?

 広澤 う~ん……、甲子園以外だね。

 ボーア オー~~~(笑い)、アハハハッ!!

 広澤 甲子園は本当に……ね。

 ボーア 打席を重ねていくごとに、私も研究されていくと思う。苦手なコースとかデータが出てくる中で、ヒロサワさんは、どう対応していったのですか? 毎回同じピッチャーが投げてくるのですか、それとも違うピッチャーに変わるのですか? 

 広澤 確かに数をやっていくと、スコアラーの方からきちんとしたデータが上がってくると思う。もちろん無視はできないけど、もっと大事なことは日本人のキャッチャーは観察力があるので、何を狙っているのか悟られないこと。例えばボーア選手がスライダーを狙っていたとして、それを悟るのがうまいので、裏をかかれる。

 ボーア オ~~(と、うなずく)

 広澤 あとね、ボーア選手がある変化球にとんでもない空振りをしたとすると、次の一球が同じボールを続けるのか、反対に内角直球でバーンってくるのか、各チームのキャッチャーの特徴を知ることも大事だと思うよ。

 ボーア ゲームをコントロールしているキャッチャーに、何も悟られないようにすればいいということか。

 広澤 あとは、だますことだね。インコースを待っているふりをして、アウトコースを打つとかね。

 ボーア オーケー、オーケー! フェイク? 演技? そういうことを覚えればいいんだ(笑い)。

 広澤 そう、そう、そう(笑い)。情報戦だよ。やられたと見せかけておいて、さらにその裏をかくことも重要だからね。

(撮影タイムに入りバット談議がスタート)

 広澤 (ボーアのバットの芯の辺りについて)ニスは塗らないの?

 ボーア 塗らないです。(手袋をしないのと同じで)木が感じられないので。

 広澤 でも木が水分を吸ってしまうのでは?

 ボーア 確かに。だから、この感覚が一番好きなんだけど、でも一応、いま何個か別のものを注文しているところなんです。重くなるのは知っているので。

 広澤 アメリカでは、どこのメーカーを使っていたの?

 ボーア オールドヒッコリーやミズノ。でもミズノをよく使っていたね。

 広澤 ミズノの木の質が好きなんだね。

 ボーア 2017年に一度、ミズノのバット工場に行ったんだ。そこで実際に自分のバットがどういう風に作られているのかを見て、どれだけ繊細に作られているのか知ったので安心して使っている。

 広澤 へ~、すごいね。すばらしい!

 ボーア (バットを鼻に近づけて)この木のにおいも大好きなんだ!

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