異常気象に苦悩する米国 エンゼルスの大谷には朗報?

[ 2018年3月11日 09:45 ]

大雪に見舞われた米北東部一帯(AP)
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 【高柳昌弥のスポーツ・イン・USA】大会出場のため、米ペンシルベニア州のフィラデルフィアを訪れていたノースイースタン大の女子バスケットボール・チームは、練習を終えたあとにもう一汗流す事態となった。

 乗っていたバスが雪に埋もれて途中で立ち往生。大学のあるマサチューセッツ州ボストンも大雪だったが、遠征先でも「サンダー・スノー」と呼ばれた悪天候に悩まされ、結局、選手全員でバスを押して窮地を脱した。

 米北東部沿岸を襲った“雷雪”は第一波と第二波が終わったが、このあと第三波が待っている。

 今月3日。日本の渡辺雄太(23)が所属しているジョージ・ワシントン大の男子バスケットボール・チームはオハイオ州デイトンでレギュラーシーズンの今季最終戦を行ったが、その前日、大学のある首都ワシントンDCから空路では現地にたどり着けなかった。この日は北東部全域で天気が荒れて多くの航空便が欠航。やむなく700キロ以上離れたデイトンまでバスで移動することになった。

 3月だというのにコネティカット、メーン、ニューハンプシャー、マサチューセッツ各州では一部地域で積雪が60センチを超えている。しかもさらなる低気圧がやってくるため、多くの住民の生活が危ぶまれている。すでに約80万世帯が停電。この時期はカレッジ・バスケットボールなど多くのスポーツがシーズンの佳境に向かっていくが、無事に日程が消化されることを祈るばかりだ。

 北極の海氷面積が減少し、そこにあるべきはずの寒気団が北米大陸や欧州に移動するという異常気象。「地球温暖化はウソ」と言い放った大統領がいたので、われわれは北極が温まった別の理由を探さないといけない。

 米国の豪雪は北東部や中西部だけではない。カリフォルニア州東部に連なるシエラネバダ山脈もここ数年では最も多い雪が積もった。

 北東部と違うのはこの雪は朗報になるということだろうか…。同州の水源はほとんどが雪解け水。日本各地に見られるような湧き水や伏流水がない土壌なので、雪がないとたちまちダムの水量が減ってしまう。実際、ここ数年の干ばつは目に余るものがあり、多くの人たちが“雪乞い”をしていたはずだ。

 乾燥度合が激しくなったために各地で広域におよぶ山火事が多発したのはご承知の通り。昨年はロサンゼルスのドジャー・スタジアムからも煙が見えたくらいなので、東海岸と違って西海岸の人たちは雪を歓迎するだろう。

 一戸建ての家には付き物の芝生はここ数年、各所で枯れていた。高温と水不足が影響したためで、スタジアムでも天然芝の管理に苦労していた。

 というわけで山々に積もった雪はとりあえず芝の緑を保ってくれるはず。大谷祥平選手(23)が入団したエンゼルスの本拠地は「エンゼル・スタジアム・オブ・アナハイム」だが、たぶん内外野の芝の管理、維持には問題なし。大谷のホーム・デビュー戦では画面に鮮やかな緑が映し出されるだろう。エンゼルスの選手が本塁打を放つと27メートルの高さまで噴水が立ちのぼるが、とりあえず水不足は解消されそうなので「大谷1号」という見出しが立つときの演出にも困らない。

 ただ、あまり喜んでしまうと、1時間で7センチも積もっていく雪と格闘する北東部の方々に申し訳ないので、しばらくは淡々としていることにする。

 米国だけでなく世界規模で起こっている異常気象。温暖化ではないとしたら原因はいったい何なんでしょうね?スポーツ界もけっこう困っています。教えてくれませんか、トランプさん、お願いしますよ…。(専門委員)

 ◆高柳 昌弥(たかやなぎ・まさや)1958年、北九州市小倉北区出身。上智大卒。ゴルフ、プロ野球、五輪、NFL、NBAなどを担当。スーパーボウルや、マイケル・ジョーダン全盛時のNBAファイナルなどを取材。50歳以上のシニア・バスケの全国大会に7年連続で出場。

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