もがき苦しんだ阪神・佐藤輝「気持ちで打ちました」初のサヨナラ劇打 優勝マジック最短15日

[ 2023年8月13日 05:15 ]

セ・リーグ   阪神4-3ヤクルト ( 2023年8月12日    京セラD )

<神・ヤ>延長12回無死満塁、サヨナラの犠飛を放った佐藤輝(右)は歓喜のウオーターシャワーを浴びる(撮影・平嶋 理子)
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 阪神は12日、ヤクルトに延長12回サヨナラ勝ち。3―3の無死満塁から佐藤輝明内野手(24)がプロ入り初の劇打となる中犠飛を放ち、チームは今季7度目のサヨナラ勝ちとなった。今季両リーグ最長となる5時間16分の死闘を制し、今季2度目の9連勝。球団でシーズン2度の9連勝は37年秋以来、86年ぶりだ。また、長期ロード9連勝は、球団新記録。14年7月以来の6カード連続勝ち越しを決め、2位には今季最大の7ゲーム差とした。歴史的な快進撃は、まだまだ続く。

 つなぎの野球――。これぞ岡田阪神の真骨頂だ。3―3で迎えた延長12回。2番・中野から始まった打線は、誰一人として欲を出すことなく、ただひたすら後ろへとバトンを渡した。決めたのは佐藤輝でも、これこそが全員でつかみ取った今季2度目の9連勝だ。

 「みんなでつないでもらったので、あとは決めるだけだと思っていた。(サヨナラ打は)うれしかったですけど、やっぱり前の打者がつないでくれたから決められたと思う」

 劇勝の口火を切ったのは虎が誇るつなぎ役・中野だ。燕の守護神・田口の5球目を左中間にはじき返して無死二塁とすると、続く森下は膝元のスライダーを必死に我慢し四球。両リーグ最多の四球数は、この日7個上積みし、40試合を残して昨季の358を上回る364四球とした。これが今年の野球だ。

 4番・大山は5球目の高めスライダーを軽打し、右前打。無死満塁。内外野が前進守備を敷いている状況で、佐藤輝にも自然と心の余裕が生まれた。2ボールからの高め直球を的確にミート。犠飛には十分な飛距離を生み、三塁から中野をホームに迎え入れた。

 「試合を勝って終わらせることができて良かった。(9連勝の期間中は)延長12回のように、みんなでつないで点を取れている。凄くいい形だと思う」

 苦しかった。もがいていた。チームは快進撃を続ける中でも、佐藤輝は決して順風満帆とは言い難かった。延長10回2死から右前打が出るまで、14打席連続無安打。3連勝した敵地・巨人戦でも、3試合計13打数2安打と沈黙した。東京からの移動ゲームとなった前日、ヤクルト戦の試合前練習でのこと。他のナインが右翼芝上で黙々とウオーミングアップを行う中でも、佐藤輝は悩み顔で一人バットを持って素振りを繰り返していた。何とかして光を探した背番号8。少しずつ、だが確実に状態は上向きつつあると言っていい。

 「気持ちで打ちました!」

 優勝マジック点灯は間近に迫る。頂点へと向かう道すがら、技術も、経験も、体力ももちろん大事だが、最後にモノを言うのは「気持ち」だろう。意地と執念で打ち上げた一本の飛球が、若き主砲を再浮上させる大きな揚力になる。(八木 勇磨)

【データ】
 ○…夏の長期ロード中の9連勝は、68年8月18~27日の8連勝を上回り最長となった。7月25~27日の巨人戦からは、14年7月以来9年ぶりの6カード連続勝ち越し。夏の長期ロード1カード目から4カード連続勝ち越しは15年以来8年ぶり2度目の最長記録。
 ○…阪神は今季7度目のサヨナラ勝ち。2位・広島が敗れたため、優勝へのマジックナンバー最短点灯は変わらず15日のまま。阪神がきょう13日に勝ちか引き分け、広島が負けなら、15日の直接対決に阪神が勝てば「M29」が出る。

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