エンゼルス大谷がメジャーの価値観を変えた 17球団で大流行“本塁打セレブレーション革命”

[ 2023年5月27日 04:30 ]

ホームランセレブレーションで兜をかぶる大谷(撮影・会津 智海)
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 大リーグの一つの価値観が大きく変わろうとしている。エンゼルスの大谷翔平投手(28)らがホームランを放った際にかぶらされる兜(かぶと)は日本でも話題だが、今季は半数以上の17球団が同様の儀式を実施。かつては過剰なパフォーマンスは不文律として禁じられていた。「Monthly Shohei」5月編では、「ホームランセレブレーション革命」とも言うべき流行の裏側に迫った。見えてきたのは、そこに大きな影響を与えた、同投手の3月のWBCでの活躍だった。(大リーグ取材班)

 ムーブに乗り遅れまいと、ダイヤモンドバックスは9日のマーリンズ戦で新たな儀式を導入した。4号ソロのロンゴリアは、チーム名の由来である蛇のぬいぐるみを首からかけられた。これで今季、ホームランセレブレーションを行ったのは17チーム目となった。

 「この流れに乗らないわけにはいかない」と発案した主砲のウォーカーは明かした。爆発的な流行を受け、多くの米メディアが儀式を特集し、格付けまでした。全国紙USAトゥデーは「我々はWBCで似たような歓喜の瞬間をいくつか目撃した。MLBでもそれが見られて幸せだ」と大会から続く流れだと指摘した。大谷はペッパーミル・パフォーマンスを積極的に行い、日系侍のヌートバーを溶け込ませた。決勝では米国主砲・トラウトを三振に斬り、帽子とグラブを投げ捨てて絶叫した。列島だけでなく、全米が衝撃のパフォーマンスを目撃した。

 かつては歓喜のオーバーアクションは相手への敬意を欠くとして、暗黙の了解で禁止されてきた。09年9月、当時ブルワーズのプリンス・フィルダーはジャイアンツ戦の延長12回にサヨナラ本塁打した。体重124キロの巨漢がホームベースを踏むと、囲んだ仲間たちはボウリングのピンのようにそろって転げて祝福した。翌年3月、オープン戦でジ軍とその時以来の対戦を迎えると、明らかな報復死球をぶつけられた。

 釣りが人気のミネアポリスを本拠とするツインズで、釣り人コスチュームの発案者の昨季10勝右腕ロペスは「もし一人だけで喜ぶのなら、それは尊敬に値しない。だが何かを成し遂げ、みんなと祝い合うのはいいことだ。WBCの時の大谷のようにね」と語る。大事なのはチームメートと喜びを共有することだと指摘。オリオールズでホースで水を飲む儀式を考案した先発左腕アービンは「グループやチームと一緒に祝うのなら、相手に尊敬の念を欠くことにはならないと思う。WBCは素晴らしかった。大谷はチームのみんなと一緒に祝い合ったんだ。そこには多くの尊敬の念がある」と話した。

 レッドソックスは、オリックス時代の吉田の応援グッズだったダンベルを日本から取り寄せ、儀式とした。異国の地での挑戦を支えたいというアレックス・コーラ監督の発案だった。ヌートバーを迎えた大谷のように。主砲のターナーは「国のためにプレーして優勝する。どれほど感慨深いものか。大谷の姿はごく自然なもので、感情を爆発させたのは多くの人々にとって良いことだったと思う」と指摘した。爆発的に広がった儀式の輪。仲間たちと喜びを分かち合うことの素晴らしさ、という新たな価値観が根付いた。そして大谷がWBCで示したプレーだけにとどまらないパフォーマンスも、その一助となったことは間違いなさそうだ。

 ≪昨年はカウボーイハット≫エンゼルスは、昨年はカウボーイハットを使用。今季はクオリティー・コントロール・コーチのティム・バス氏を中心に球団が考案し、鹿児島県薩摩川内市が本社の甲冑(かっちゅう)工房丸武産業が製造した兜を採用した。大谷にも相談の上、水原一平通訳が発注した。大谷は「もっとかぶれるように頑張りたい」と兜パフォーマンスに意欲を示している。今季広がったホームランセレブレーションだが、かぶりものが圧倒的に多く、エ軍の兜が与えた影響は大きい。その上で各球団ならではの色を工夫しており、オリオールズの外野手ヘイズは「兜は大谷が持ち込んだアイデアと聞いたけど、彼らのチームにマッチしているよね」と話した。

 ≪米メディアが格付け≫爆発的な広がりを受けて数多くの米メディアがセレブレーションを格付けした。主要5メディアの評価は別表の通り。その中でもエンゼルスの兜は1位票1つ、2位票1つ、3位票2つ、5位票1つと非常に高い評価を受けており、最も楽しまれているパフォーマンスの一つと言えそうだ。他球団ではオリオールズ、マリナーズなども評価が高い。

 ≪ブレーブスのビッグハットは禁止に≫ブレーブスが今季導入したビッグハットはチームやファンから好評だったが、4月下旬に廃止された。オフィシャルキャップサプライヤー契約を結ぶニューエラ社が、他社製の帽子の使用にクレームを入れたためだ。現在では見ることができなくなっている。

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