ロッテ・安田の変化を感じたライトへの放物線

[ 2022年9月21日 08:30 ]

18日、日本ハム戦の9回に勝ち越し3ランを放ちガッツポーズするロッテ・安田(撮影・高橋茂夫)
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 ほれぼれするような放物線だった。ロッテ・安田尚憲内野手(23)が18日の日本ハム戦(札幌D)で同点に追いついた9回2死一、三塁から右翼席へ運んだ決勝3ラン。広くて高いフェンスを軽々と越えて、中段近くまで飛んでいった。

 今季8本目のアーチ。同期のヤクルト・村上が記録的な打撃を見せている中、少なすぎると思いながらも、こんな打球を打てるなんて、安田の打撃もついに覚醒したのではないか、と勝手に期待している。

 試合後の取材でも、「今はいい打球、いいスイングができている。最近は右翼へも本塁打が出ているので、いい感じだと思います」とコメント。その表情からもこれまでと違う手応えが、こちらに伝わってきた。

 チームづくりの一環として、どうしても「育成」と「勝負」を両立は難しい。実績のない若手を使えば、勢いあるときは結果が出ても、調子が落ちると低迷期が長くなる。そうなれば、チームの順位は落ちるし、他の選手にも大きな影響を与えてしまう。

 そんな中、2年前はシーズン終盤に失速しながらも、2位に食い込んだロッテの戦いぶりは大収穫だと思った。プロ3年目ながら、何の実績もない安田を、シーズンの大半に4番で起用し、しかも優勝争いを経験させることができたからだ。

 その理由を聞くと、井口監督は「他にいなかったので…」と笑っていたが、普通ならばできない「育成」と「勝負」を並行して戦えたのだから、近未来への大きな投資になると感じた。

 ところが、翌年の安田はジャンプアップできたとはいえなかった。
20年 113試合 打率・221 6本塁打 54打点
21年 115試合 打率・242 8本塁打 55打点
22年 110試合 打率・263 8本塁打 43打点(9月21日現在)

 打率は毎年上昇しているが、本塁打数を増やさなければ、相手バッテリーに怖さを与えられないと感じた。交流戦後の取材では、「今の実力だと、引っ張った打球は右翼席に入るけど、左中間だとなかなか入らない。これがライナーで入る感じが出だしたら幅が広がる」と話していた。

 しっかりと自己分析できた印象を持った一方で、小さくまとまってしまわないかと、勝手に心配した記憶もある。

 そんな、記者のモヤモヤを吹っ飛ばしてくれたのが、冒頭のアーチだったわけだ。今季はここまで8本塁打だが、8月19日の楽天戦で今季3号をマークしてから1カ月で6本塁打と、量産傾向にある。

 打球はすべて右翼方向だ。2カ月前に話してくれた理想型と少し違うのかもしれないが、こちらとしてはそんな荒々しさも頼もしく感じる。今季も残り9試合。なんとか、安田には二桁10本塁打を達成してほしい。それが今の願いだ。(記者コラム・横市 勇)

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