“氷上のチェス”カーリング 単なる頭脳戦にあらず

[ 2022年2月13日 05:30 ]

ROC戦でショットを放つ藤沢五月(ロイター)

 【藤山健二 五輪愛】カーリングの日本代表、ロコ・ソラーレが奮闘している。12日のデンマーク戦では最終第10エンドに3点を奪って逆転勝ち。14日の対戦相手は中国、韓国で、1次リーグ突破に向けて負けられない戦いが続く。

 よく“氷上のチェス”といわれるカーリングだが、頭脳ゲームではなくスポーツであることはストーンを投げる時の姿勢をまねてみればすぐに分かる。足を前後に目いっぱい広げて腰をグッと落とす。これだけで普通の人はひっくり返ってしまうはずだが、選手たちはその格好で腕や上半身を自在に動かす。リンクの長さは45・72メートル。重さ約20キロのストーンを1エンドにつき8投、1試合で80投するのだから、いかに過酷なスポーツであるかが分かる。

 さらにこの競技を難しくしているのは氷の状態が一定ではないということだろう。氷の表面は実は平らではなく、人工的にペブルという無数の凹凸が作られている。開始当初はペブルとの摩擦でストーンが滑りにくく曲がりやすいが、試合が進んでペブルが削られてくると一転してよく滑るようになり、思ったより曲がらないという誤差が生じる。それを補正するのがスイープの役割だ。

 会場内の状況も勝敗を左右する。空調の強さや流れは氷面温度を変化させ、観客の人数や応援さえも間接的に大きな影響を及ぼす。観客の体温や水分、応援の声によって場内の温度や湿度が変化し、氷面に霜が降りて突然ストーンが滑らなくなることがあるからだ。アイスホッケー女子の中国戦では声を出すことを禁止されているはずの観客が「加油(頑張れ)!」を連呼。なぜか係員は全く取り締まるそぶりを見せなかったので、次の中国戦ではいち早く氷の変化を読み取ることが勝利への条件となるかもしれない。

 ちなみにストーンは、ぶつかると90度に近い角度で動くことが多いのだとか。それを頭に入れてテレビを見ると、さらに楽しめるはずだ。(特別編集委員)

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2022年2月13日のニュース