高木美帆 本命1500メートルで2大会連続銀「率直に悔しい」…冬季日本勢最多4個目メダルも

[ 2022年2月8日 05:30 ]

北京五輪第4日 スピードスケート女子1500メートル ( 2022年2月7日    国家スピードスケート館 )

<北京五輪・スピードスケート>女子1500メートル、喜ぶ金メダルのイレイン・ブスト(右)と2位の高木美帆(撮影・小海途 良幹)
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 5種目に出場する高木美帆(27=日体大職)が悲願の個人種目での金メダルを逃した。女子1500メートルで1分53秒72の2位となり、2大会連続の銀。世界記録を持つ優勝候補の筆頭だったが、18年平昌五輪で0秒20差で敗れたイレイン・ブスト(35=オランダ)に0秒44差で再び屈した。本命種目で頂点に届かなかったとはいえ、冬季五輪の日本勢単独最多となる通算4個目のメダルを獲得。次戦は12日、女子団体追い抜き1回戦に出場する。

 連覇して跳びはねる宿敵を、高木美は拍手で称えた。敬意を込めて握手を交わしたが、落胆は隠せない。世界で唯一1分50秒台の壁を破る世界記録保持者。今季W杯3戦全勝で迎えた大一番で頂点を逃し「また勝つことはできなかったんだな」と漏らした。4年前と同じブストに屈して2大会連続の銀。「率直に悔しい。1分53秒台前半を出したと思っていたが、届かなかった。彼女にかなわなかった」と唇をかんだ。

 最終15組のアウトスタート。3組前にブストが五輪記録を0秒23更新した。高木美は「タイムは聞こえたが、力んだりはなかった」と最初の300メートルを出場選手で最速の25秒10で通過。果敢に攻めたが、残り3周のラップは全てブストを下回った。5日の3000メートルで6位。4年前の5位を下回り「多少の不安や迷いが出た」と自信が揺らいだ。

 レース前に目をつぶって集中している際にはリンクの縁にぶつかりよろけた。「方向感覚とリンクの形が合っていなかった。恥ずかしい」と苦笑いしたが、珍しい場面だった。15年から師事する日本代表のヨハン・デビット・コーチがコロナ感染で隔離中。LINEで「強い気持ちでいくだけ」と勇気づけられたが、コーチの不在もメンタルコントロールを微妙に狂わせた。

 始まりもブストだった。出場を逃した14年ソチ五輪から1カ月後の世界選手権。練習時間が重なり、当時指導を受けていた青柳徹氏(日体大総監督)の指示でブストの後ろについて滑った。約3周、2分未満のわずかな時間。事前に承諾を得ておらずブストから青柳氏にクレームが来たが、ブレードの操作方法などを間近で学ぶ貴重な経験となった。

 「私がここまで速くなれたのはブスト選手が前を走ってくれたおかげ。今日のレースは本当に強かった」。悲願の個人種目での金メダルを逃したが、通算4個目のメダルは冬季五輪の日本人最多。レース後はせき込む場面が見られ「強くせきが出るのは絞り出せた時。出し切るレースはできた」と前を向いた。潔く負けを受け入れ、残り3種目に全力を注ぐ。

 【高木美帆過去の五輪】

 ☆10年バンクーバー スピードスケート史上最年少の15歳で初出場した。“スーパー中学生”として注目を浴びたが、1500メートルは23位、1000メートルは完走した35選手中最下位。日本が銀メダルを獲得した団体追い抜きは控えで一度も出場できなかった。

 ☆14年ソチ五輪 日本代表選考会で1000、1500、3000メートルの3種目に出場したが、すべて5位に終わり落選。五輪期間中は初出場した姉・菜那らの滑りを地元のパブリックビューイングで観戦し、複雑な思いにかられた。

 ☆18年平昌五輪 4種目に出場。最初の3000メートルは5位。続く1500メートルで銀メダルを手にし、スピードスケート女子個人で98年長野五輪の岡崎朋美の500メートル以来20年ぶりに表彰台に上がった。1000メートルで銅、団体追い抜きで金を獲得。一大会で金銀銅メダルをコンプリートした。

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