沙羅号泣 スーツ規定違反で失格、1回目103メートル大ジャンプが…メダル逃すも全員で一丸4位

[ 2022年2月8日 05:30 ]

北京五輪第4日 ノルディックスキー・ジャンプ混合団体 ( 2022年2月7日    国家スキージャンプセンター )

<北京五輪ジャンプ混合団体>2本目を飛び終えると、目に涙を浮かべる高梨沙羅(ロイター)

 新種目のジャンプ混合団体で日本(高梨沙羅、佐藤幸椰、伊藤有希、小林陵侑)は4位だった。1回目に1番手の高梨沙羅(25=クラレ)がジャンプスーツの規定違反で失格となるアクシデント。他チームにも失格者が出る波乱の展開となり、残り3人の得点だけで10チーム中8チームが進める2回目へ進出すると、高梨が今大会ラストジャンプで98・5メートルをマークするなどメダルまであと一歩と迫った。

 失格の裁定を聞いた高梨は両手で顔を覆い泣き崩れた。関係者に声を掛けられても顔を上げられず、抱えられるようにして控室へ戻った。日本勢の先陣を切り、1回目はヒルサイズに3メートルと迫る103メートルを飛んだが、ジャンプ後の抜き打ち検査でスーツの太腿回りのサイズが規定を2センチオーバーしていたことが判明した。

 2回目。「自分のせいだ」と責める高梨のもとに小林陵ら全員が駆け寄った。高梨は「最後まで飛びます」と泣きながら訴え、気持ちを切り替える間もなくスーツを替えて挑むと、K点を越える98・5メートルをマーク。涙は止まらず、深々と一礼した。その後はチームメートのジャンプを見守り、アンカーの小林陵が106メートルを飛んでメダル圏内に迫ると、胸を手で押さえてまた涙を流した。

 日本女子チームの横川朝治ヘッドコーチによると、高梨のスーツは2日前の個人戦と同じもの。なのに、なぜ違反となったのか。「選手は僕らが計測した上で渡したスーツをそのまま着る。僕らスタッフのチェックミス」と説明。少しでも浮力を得るため、検査の前に筋トレをして血流を増やし一時的に太腿などを太くしてスーツとのサイズ差を減らすのが通例という。だが、今大会は会場の標高が1600メートル以上と高く「寒さが厳しくて(血流を増やすのに)体が追いつかなかった。世界がギリギリを狙っている。そうしないと勝てない世界」と、選手をかばった。

 高梨を含め実に10チーム中4チームの女子5人が失格となった。14年ソチ五輪銀のイラシュコ(オーストリア)、今大会個人銀のアルトハウス(ドイツ)も規定違反。強豪ドイツが10チーム中9位に沈んで1回目敗退となる大波乱の中、日本は高梨以外の3人の得点ながらギリギリの8位で2回目へ進み、男子エース小林陵の大ジャンプなどで4位まで追い上げる意地を見せた。

 5日の女子個人ノーマルヒルで4位に終わり、高梨は「力を合わせて頑張っていきたい」と混合団体に気持ちを切り替えていたが、失格で124・5の得点もゼロとなった。4年間積み重ねた努力の成果を見せつつも、個人、混合団体とも試練に見舞われた高梨の北京五輪が終わった。

 ≪体形や生地の微妙な変化が影響≫空中で受ける浮力に影響するスーツはFIS(国際スキー連盟)によって厳しく規制されている。5層構造の生地のスーツはまず、空気の透過量が一定の数値以上でないと失格となる。当然、選手が使用するスーツは事前にFISのチェックを受けているが、さまざまな外的要因(濡れなど)で変化することがある。サイズは選手の体にフィットしている必要があり、余裕は男子が1~3センチ以内、女子は2~4センチ以内。余裕があれば空中で空気をためることができるためだが、ギリギリの数値で製作されたスーツは選手の体形の微妙な変化や、生地の伸縮などで違反とされるケースがあり、W杯では失格者が頻発。高梨はW杯で18年12月、21年2月に同違反で失格となった経験がある。

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2022年2月8日のニュース