スマホがあればいつでもどこでも!臨場感抜群パラスポーツVR体験

[ 2021年3月18日 07:00 ]

19歳から車いす陸上競技を始めた渡辺勝
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 「パラダイムシフト(考え方の変化)」と「リング(輪)」の造語で、障がい者理解を広める活動「パラリング」に取り組むリクルートは、障がい者スポーツの疑似体験ができるVR(360°)動画「VR short video of Pararing」を公開中。同社サステナビリティ推進室の細貝智博氏と、動画にも出演している車いす陸上の渡辺勝(29)にパラリングの意義やVR動画の魅力について話を聞いた。

 「パラリング」について細貝氏は「リクルートでは一人ひとりが障がいの有無に関わらずそれぞれが活躍できる社会の実現を目指しており、障がい者の理解をより推進するための活動に取り組んでいます」と語る。

 同社はこれまでパラリング活動の一環として、パラスポーツ体験会を開催。数年間にわたり、50回以上、5000人以上が参加してきた。しかし、時間や場所の確保などさまざまな制約もあり、その開催数には物理的な限度があった。「スマホ一台あれば、いつでもどこでもパラスポーツを知ってもらうきっかけとなるコンテンツを作ろうと。VRという形であれば、パラスポーツを疑似体験し、興味を持ってもらえると思ったのがきっかけです」とVR動画制作の経緯を明かした。

 このほど4競技を追加し、ダイジェスト版を含む計11動画を公開中。今後については「パラスポーツは、障がいのレベルに合わせてクラスやルールが設定されており、その種目数も多いので出来る限り網羅していきたいです」と競技数を増やしていくつもりだ。

 VR動画では選手へのインタビューも収録。競技を始めたきっかけなど、各選手のパーソナルな部分についても深く知ることができる。選手自身が障がいについて語る様子は、パラスポーツへ興味を抱く入口になるだろう。

 細貝氏は、「パラスポーツってどんなだろう?と気軽な気持ちで見ていただければ。健常者の方がパラスポーツへの興味関心を持つきっかけとパラスポーツを通した障がい者理解に加え、ぜひ障がいを持った方にも見ていただき、『私にもできる、私もやりたい』と新たにパラスポーツにチャレンジするきっかけを生むことができたら嬉しいです」と笑顔で語った。

 渡辺は19歳の時に交通事故に遭い、入院先でパラ陸上選手と出会ったことがきっかけで競技を始めた。現在、トラック種目の800メートル、1500メートルからロード種目のマラソンまで中長距離の練習を続けている。「元々はトラックをメインに考えていたが(日本代表になる)可能性の高いマラソンも同時に取り組もうと思い、活動の幅を広げている」と話す。
 
 競技の最大の特徴は「レーサー」という競技専用の車いすに乗ること。「速く走るためだけにつくられている。マラソンの下りでは速度が60キロくらい出ます」と説明するように、そのスピードは圧巻。中高時代に野球をしていた渡辺も最初はその速度に驚いたという。VR動画でもトラックを「レーサー」が駆け抜けていく様子が収録されており、「やっぱりスピード感が一番の魅力。音も迫力があるのでぜひ感じていただければ」と自ら見どころを説明した。

 今回のVR動画について渡辺は「パラスポーツはなかなか見てもらえないというのが選手たちの悩み。このようにいろいろな競技を取り上げてもらい、見てもらえる機会が増えるのは純粋に嬉しい」と語り、「ぜひ、障がいを持つ子供のご両親にも見てほしい。障がいがあってもスポーツをすることが当たり前になってほしい」と呼びかけた。

 ○…障がい者理解を目的とした今回のVR動画。どの映像も迫力満点で、今まで見たことのない視点からの映像は圧巻。映像とともに音もリアルに感じられ、パラスポーツに興味を持つきっかづくりになるはずだ。まずは、10競技を一気に見られるダイジェスト版をぜひ見てほしい。

<NEW・パラ柔道>
 視覚障がい者柔道のため、組んだ状態からスタート。審判の位置から近いところで投げる映像は迫力がある。視覚障がい者の見え方はそれぞれ異なるため、選手から話を聞いて制作したイメージ映像も興味深い。

<車いすフェンシング>
 選手の頭につけたカメラと、選手の剣と剣をかわす、そのど真ん中に360度カメラが置かれている。そのカメラの真横を剣がすり抜けていく様子は、まさにスリル満点。フェンシングならではの剣の音も体感できる。

<車いすバスケットボール>
 距離感が非常にわかりやすく撮影されている。ドリブルする選手と守ろうとする選手の競り合いの状況など、車いすをどのように使っているのかもわかり面白い。選手が座って打つゴールの高さ、遠さを体感できる。

<シッティングバレー>
 お尻をつけることがルールの競技。選手がお尻をつけながらどう移動しているのかに注目だ。アタックするシーンでは、トスを受けてから、お尻をスーッと滑らせながら、その勢いのままジャンプせずにアタックをする。

<パラ馬術>
 パラスポーツの中でも唯一、動物と一緒に行う競技がパラ馬術。自分だけではない、思うようにいかないのが馬術そもそもの魅力だが、視点の高さにも注目。馬を操っていることが感じられるような映像に仕上がっている。

<パラローイング>
 水面ぎりぎりをスピード感とともに、すっーと滑っていくような迫力が見どころ。また、見晴らしが良いため、風景の移り変わりを楽しめるのも特徴の一つ。360度のVRならではの新鮮さ、気持ちよさが感じられる。

<NEW・パラ卓球>
 障がいの種類によって、選手それぞれに独自のプレースタイルがある。今回出演の選手は低身長の障がいがあり、手のリーチが短く、球がとれる範囲が限定される。左右にふられる前に先に仕掛ける戦術を体感できる。

<NEW・パラ陸上競技>
 車いすにカメラが設置されているため、選手がどのような姿勢で漕いでいるのかがリアルに感じられる。またコース上にカメラが置かれており、その上を猛スピードで通り抜けていくスピード感と音の迫力も見どころ。

<車いすテニス>
 選手のヘルメットについているカメラからの映像以外に、ネット中央にもカメラを設置。この位置からは、これまで観客も審判も誰も見たことがない視点でボールが通り過ぎていくので、かなり迫力ある映像になっている。

<パラ射撃>
 独特の間や緊張感に惹きつけられる静のスポーツ。インタビューでは、1時間15分の間に60発打つことはまるで綱渡りのような感覚だと表現。射撃前後の弾の変化やグリップの調整など、競技ならではの魅力を体感ができる。

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