大相撲春場所、史上初の無観客開催 鶴竜、土俵入り披露も掛け声なく「間違っているかと」

[ 2020年3月9日 05:30 ]

大相撲春場所初日 ( 2020年3月8日    エディオンアリーナ大阪 )

史上初の無観客開催となった大相撲春場所で、協会あいさつに臨む力士ら(撮影・後藤 正志)
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 新型コロナウイルスの感染拡大で史上初の無観客開催となった大相撲春場所が8日、大阪市のエディオンアリーナ大阪で初日を迎え、拍手や歓声のない静寂の中で淡々と取組が行われた。初日恒例の協会あいさつでは、幕内力士と審判部の親方が勢ぞろい。八角理事長(元横綱・北勝海)はテレビ観戦するファンに向け、勇気や感動を届けることを誓った。

 全てが異例の光景だった。会場の正面入り口は金属製の門で閉ざされ、力士などののぼりも掲げられなかった。いつもは正面から入場する力士らは裏口にタクシーや関係者の自家用車を横付けし、マスク着用で館内に入った。午前8時40分の序ノ口の取組開始から幕内取組後の弓取り式が終わるまで、館内は静寂が支配した。

 初日恒例の協会あいさつは通常、十両の残り3番のところに組み込まれるが、この日は幕内土俵入り、横綱土俵入りのあとの賜杯・優勝旗返還式終了後に実施された。三役以上の力士が土俵に上がるのではなく、東西に両横綱をはじめとする幕内力士、向正面に審判部の親方が勢ぞろい。土俵には八角理事長ただ一人が上がった。

 八角理事長はあいさつで、相撲は神事であることを強調した。「力士の四股は邪悪なものを土の下に押し込む力があると言われてきました。また横綱の土俵入りは五穀豊穣(ほうじょう)と世の中の平安を祈願するために行われてきました」。無観客ながら本場所を開催することの意味について「世界中の方々に勇気や感動を与え、世の中に平安を呼び戻すことができるよう、15日間全力で努力する所存です」と訴えた。

 無観客の中で初めて雲龍型の横綱土俵入りを披露した鶴竜は「ここなら拍手が来るかなと思ったところで掛け声もなく、(所作を)間違っているかと思った」と違和感は拭えなかった。その上で「そういう意味では忘れられない一日」と異例の場所の感想を語った。

 協会関係者に新型コロナウイルスの感染者が出た場合、中止とする見通しだ。相撲協会はプロジェクトチームを立ち上げて感染予防に努めているものの、不安と背中合わせの土俵は続く。その中で力士の奮闘が目立ち、初日に横綱、大関が安泰だったのは18年夏場所以来、11場所ぶりとなった。幕内後半の審判長を務めた藤島審判部副部長(元大関・武双山)は「今日は勝ち負けというより、いい相撲が多かったと思う」と評価した。

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