【佐藤満の目】勝負を分けた微妙な判定 川井梨の“必死さ”に軍配

[ 2019年7月7日 05:50 ]

レスリング代表決定プレーオフ・女子57キロ級   川井梨3―3伊調 ※ビックポイント表 ( 2019年7月6日    埼玉県・和光市総合体育館 )

伊調(下)を攻める川井(撮影・吉田 剛)
Photo By スポニチ

 6月16日の対戦から両者が心理的技術的課題を克服し、世界最高レベルの見応えある試合になった。伊調は姿勢を低くして前に出ながら相手の攻めをさばき、川井梨は至近距離を取ろうとして本来の攻撃的なレスリングを展開してくれた。

 勝敗を分けた得点シーン。伊調は川井梨の右脚を捉え、確実にポイントを取るために一瞬動きが止まった。あとのない川井梨は瞬時に機転を利かせて体勢を回り込ませ、ネルソン(脇と首を抑えてきめる)。もつれた状態で押し込んだ伊調が優位(ニアフォール=2点)か、タイミングよく川井梨が返したのか、難しい判断だが、先に川井梨がネルソンで返したと見た。その後のもつれた場面はバックに回った1ポイントか、さらに押し込んだ2ポイントか微妙だったが、伊調にすれば動きが止まったことが全てだった。

 伊調サイドが判定に不服を感じた点の1つに、川井梨のタックルを切ったあと、伊調がバックを取ろうとした動きを静止されたことがある。確かに微妙なジャッジだが、現役世界女王の川井梨の必死さがそう判断させたとしてもおかしくない。復帰から短期間で現役世界女王と3―3の試合をした伊調には、他階級への転向も含め、東京五輪への挑戦はやめないでほしいと願う。 (88年ソウル五輪フリー52キロ級金メダリスト、元日本男子強化委員長、専大教授)

続きを表示

この記事のフォト

2019年7月7日のニュース