伊調、東京五輪絶望的…川井梨に3―3もビックポイント差で涙 自力出場消滅

[ 2019年7月7日 05:30 ]

レスリング代表決定プレーオフ・女子57キロ級   川井梨3―3伊調 ※ビックポイント表 ( 2019年7月6日    埼玉県・和光市総合体育館 )

川井(後方)に敗れ、肩を落とす伊調(撮影・吉田 剛)
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 伊調馨(35=ALSOK)が目指す前人未到の五輪5連覇が絶望的になった。世界選手権(9月14日開幕、カザフスタン)の代表決定を懸けて行われ、女子57キロ級は伊調が川井梨紗子(24=ジャパンビバレッジ)に3―3のビッグポイントの差で敗れた。世界切符を逃し、同階級での20年東京五輪の自力出場が消滅。世界選手権での川井梨の結果を待つのみとなった。

 レフェリーが川井梨の腕を持ち上げた時、敗者となった伊調は唇をかみ締めた。五輪金メダリスト同士の頂上決戦は、その呼び名にふさわしい接戦。だが、ハイレベルな戦いをした分、突きつけられた現実は厳しかった。「(五輪)5連覇はなかなか手が届かない。そこまでいくには並大抵のものではない」。試合後はしばらくタオルをかぶって悔しがり、必死で自分と向きあった。

 第1ピリオドで相手の消極的姿勢により1点を先取。昨年の復帰後、川井梨との4度目の戦いで初めて先制点を奪った。攻めの姿勢を出したが、相手も世界女王。1―1の残り1分で仕掛けたタックルを返されて2点を失い、最後に追いついたものの決めた技の得点の差で競り負けた。川井梨相手の3敗が力の差を表していた。2年のブランクを経て昨年10月に実戦復帰。16年リオ五輪からの空白を埋める作業は「難しさとやりがいがあった」という。幼少期からの恩師・沢内和興氏が「あれだけできれば十分だが厳しい。(リオから)年を取りました」と話したように、35歳という年齢に加えて古傷を抱えた体での復帰は順調ではなかった。

 試合後に周囲のサポートについて問われると、目を潤ませ声を震わせた。「仲間や家族、背中を押してくれた人たちが、世界選手権で戦う姿を見て喜んでくれたらうれしいと思ってやってきた」。6月の全日本選抜で負けてからは、姉で五輪メダリストの千春さんが自宅で毎日サポートしてくれた。試合後に涙した姉に「千春のために勝ちたかった」と本音をもらした。

 川井梨が世界選手権でメダルを逃せば五輪に望みがつながるが、可能性は低い。伊調は「本当に悔しいけど、自分が弱かったと言いたくない。梨紗子が強かった。今は悔いはない」と冷静に受け止めた。階級変更についても否定的で、田南部コーチも「62キロ級は考えていない」とした。

 今後について聞かれた五輪4連覇の女王は語った。「(世界選手権の結果を)待つ立場なので。選手としても指導者としても、レスリングに携わっていく思いは変わらない」。諦めてはいない。だが、その道のりは果てしなく険しい。 

 ▽レスリング東京五輪への道 昨年12月の全日本選手権と6月の全日本選抜で優勝者が異なる場合はプレーオフを行い、世界選手権代表を決める。世界選手権の五輪実施階級でメダルを獲得した選手は東京五輪代表に内定。4~6位で出場枠を獲得した選手は今年12月の全日本選手権で優勝すれば代表入りが決まる。出場枠獲得選手が敗れた場合はプレーオフに進む。

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