あいさつで仲深マル 多摩川のマルタ

[ 2021年3月14日 07:15 ]

ソウルシャッドで釣れた51センチのマルタと“伐採”歴15年の筆者
Photo By スポニチ

 【奥山文弥の釣遊録】多摩川のマルタ遡上(そじょう)シーズンは例年、ひな祭りからこどもの日までという約2カ月。しかし、今年は一足早く2月19日にやってきました。

 マルタが川を上る理由はただ一つ。産卵です。サケのように浅瀬でバシャバシャ水しぶきをあげるので迫力があります。平均サイズが50センチ前後と大きいため、都会の釣りとしては良い対象になります。そしてそれらは全てが天然魚です。サケとは大きく価値が違いますが「タマゾンサーモン」と言って称賛する人もいます。

 マルタは魚ですが、丸太としてそれを伐採する(釣る)という駄じゃれで、マルタファンによる執筆の「多摩川森林組合 マルタ釣り的考察」という本が出版されています。科学的なことから釣り方、料理まで出ています。

 マルタはおいしいのでしょうか?私たちは試食会をやったことがありますが、もしそうならすでにいなくなっていると思います。コイ科のウグイの仲間であるからこそ、それも多摩川下流だからこそ持ち帰らないため、繁殖が継続されているのです。

 魚にしてみれば、それでも人間が待ち受けているのですからいい迷惑でしょうけれど、最近はラバーネットを使って丁寧に扱う人も増えてきているので、私たちは安心しています。

 釣り方などはルアーやフライが多いです。人それぞれのスタイルがありますが、決して岸に引きずり上げたり、蹴っ飛ばしたりしないでくださいね。産卵遡上なので命として丁寧に扱ってください。

 マルタはサケと同じく、川の中に入ったら餌は食べません。目の前に来た餌をパクッとやるわけでもなく、たまたま口に引っかかるのです。つまりたくさんいる時は上手に流さないとファールフック(口以外へのスレ掛かり)を多発します。特にルアーでダウンストリームスイング(下流に向かって扇状に流す)と引っ掛け釣りのようになってしまいますのでご注意を。慣れてくるとフェアフック(口掛かり)できるようになります。

 フライ名人、川崎河川漁協の早川弘之さんは、産卵の邪魔でフライを追い払うので掛かると言っています。彼はサイトフィッシングが得意で、魚を見つけてその1メートル上流に上手にフライを打ち込んで釣っています。

 これだけあおっておいてなんですが、養殖の放流マスと違って行けば簡単に釣れるわけでもありません。

 昨日までここにいたのに、翌日は上流へ上ってしまったか、あるいは産卵を終えて下りてしまったか、なんてことは普通にあります。

 タイミングよく群れに当たると産卵行動で水面がバシャバシャになります。これをカーニバルとかマルタ祭りと言ってそこに大群がいるのが分かるため人も集まります。

 マルタ釣りの大切なテクニックは混んでいる時のあいさつです。また後行者は先行者にあいさつして「一緒に釣らせてね」とお願いしましょう。この一言があるかないかで場の雰囲気が変わります。私の知る限り「ダメ」という人は皆無です。しかし、無言で入ってきてしかも魚のいるところをみんなが遠巻きで釣っているのに立ち込んじゃったりすると嫌がられます。

 お子さま連れの場合は父親の威厳にも関わりますが、後から入る場合、「子供を連れて来てるのでよろしく」と一言言えば、おせっかいなベテランが釣らせてくれるかもしれません。

 そのぐらいあいさつが大切です。年券をぶら下げている人は経験者ですからいろいろと聞いてみるのもいいと思います。

 先行者も占有せず何匹か釣ったらシェア交代してあげましょう。ここは都会の憩いの川、多摩川なのですから。

(東京海洋大学客員教授)

続きを表示

この記事のフォト

バックナンバー

もっと見る