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息子のカジキに心跳ねる9カ月 「衛星タグ」打ち成功

[ 2020年8月29日 11:17 ]

長男・勇樹が釣り上げたキハダ(左は筆者)
Photo By スポニチ

 【奥山文弥の釣遊録】静岡県遠州灘へカジキ釣り行ってきました。釣ったカジキに「衛星タグ」という標識を打つ環境調査です。

 ビデオなど記録係に家内を、力仕事と雑用係にと長男・勇樹を同行させました。船は友人の松下正春さんの所有する「大洋丸」です。

 今回行うのは「衛星タグ」。「サテライトタグ」とか「ポップアップタグ」といわれる超進化版です。タグの中にコンピューターを仕込み、それは270日(約9カ月間)作動します。水中では電波が届きませんが、作動期間終了後、カジキから自動的に切り離され水面に浮きます。浮いたら電波が衛星経由で受信できるので、その間のカジキの行動が分かるわけです。

 国際ゲームフィッシュ協会(IGFA)ではその年にこの衛星タグを打ったカジキがどれだけの距離を泳いだかを競うグレートマーリンレースを行っています。これは世界中どこの海で釣られたカジキでもOK。衛星タグを打ち、泳いだ最長距離のカジキにタグを打ったチームが表彰されるのです。

 通常のカジキ釣り大会では、釣ったカジキの重さを量って使ったラインクラスで判定され、順位が決まりますが、カジキのサイズは問いません。しかし270日後にしか結果が出ないのです。その間ワクワクして希望が持続するのです。

 カジキといえば、釣り上げたら港へ持ち帰りぶら下げて一緒に写真を撮る、というのが今まででしたが、タグ&リリースが推奨され、さらにこんな衛星タグを打つという余裕の考え方があるのです。

 さて初日の8月9日、午前中いきなりカジキのヒットがありました。そしてジャンプ。こんな簡単にヒットしちゃっていいの?と思いました。私たちはカジキのジャンプを見るのは久しぶりです。その姿に感動し、必死でリールを巻きましたが、ボート際で惜しくも逃げられました。

 ストップフィッシング10分前、またヒットしました。今度こそ逃してなるものかとファイトしましたが、これは私が時間をかけ過ぎたためちょっと弱ってしまいました。衛星タグは諦め、普通のタグを打ってリリースしました。

 初日に2匹もヒットしたものですから勇樹が釣りたくなるのも無理はありません。2日目は、「今日はおまえの番」とアングラーを任せました。

 やはり午前中ヒットがありましたが、これは数回ジャンプした後フックオフ。「まじか?」と残念がっても後の祭り、そして2匹目のヒットは50キロのキハダでした。

 そして最終日、朝から何もなく、時間だけが過ぎていきました。「今回衛星タグは駄目かも」と半分以上諦めていたその時、リールがうなりました。「カジキだ!跳ねてる」。勇樹がロッドをホルダーから抜きながら言いました。ヒットしたらアングラー以外の人は魚が掛かっていない仕掛けを回収するので、先の3匹は見ている暇はありませんでしたが、今回は何度もジャンプしているのが見えました。勇樹も2匹目とのファイトなので余裕で寄せてきているため魚は元気です。近くに寄せてくるとそれはシロカジキ(ブラックーマーリン)でした。これに無事、衛星タグとノーマルタグを打ち、今回のミッションは無事終了となりました。9カ月後、このタグの魚がどこまで泳いでいるのかが楽しみですね。(東京海洋大学客員教授)

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